2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K20802
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黄 孝善 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (80828848)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 江戸語 / 終助詞 / 承接 / 体系 / 基本的な意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世後期江戸語の文末に用いられる複合用法の終助詞について階層性と終助詞が持つ基本的な意味との関係を明らかにして、その体系を描き出そうとするものである。研究対象の終助詞は「か、わ、ぞ、ぜ、や、よ、い、さ、な、の、ね、え、す」という13種類であり、これらの終助詞が「わな」「ぞえ」のように複合的に用いられる終助詞を江戸語資料(洒落本、人情本、滑稽本)から用例を収集した。収集した用例を元に分析した結果、江戸語終助詞は、他の終助詞より常に前に位置するものA類「か、わ、ぜ、ぞ」、他の終助詞の前にも後ろにも承接するものB類「や、よ、い、さ、な」、常に他の終助詞の後ろだけ承接するものC類「の、ね、え、す」に分けられた。また、これらの終助詞が複合的に用いられる際には、一定の承接順があり、A類→B類→C類の順に承接する。つまり、江戸語終助詞は、A類→B類→C類の順に承接する体系を持つと考えられる。しかし、なぜ江戸語終助詞がこのような体系を持つのか、また、A~C類のそれぞれの共通の意味が何かについては不明瞭である。今まで明らかになった終助詞の基本的な意味からそれぞれの類の共通の概略的な分析では、A類は「情報に対する話し手の新しい認識を示すもの」、B類は「話し手が情報を受容していることを示すもの」、C類は「話し手が情報を受容していないことを示すもの」に思われる。それぞれの終助詞は基本的な意味を持っている。その基本的な意味が終助詞の体系と関係があることが概略的であるが明らかになった。このように終助詞について意味と体系を明らかにしたものは日本語史上にみられないもので、重要な位置を示すものであり、また現代語の終助詞の意味や体系についての研究にも役に立つものであると思われる。
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