2018 Fiscal Year Annual Research Report
『封神演義』版本研究――主要版本における本文の継承関係と出版背景の考察
Project/Area Number |
18H05600
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩崎 華奈子 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (30822887)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2021-03-31
|
Keywords | 中国古典文学 / 白話小説 / 版本 / 校勘 |
Outline of Annual Research Achievements |
『封神演義』の版本系統を本文校勘により解明するため、本年度は主にその準備として、(1)調査対象とした5種の版本うち未入手の1種(織田文庫蔵本)の複写請求、(2)作業用資料の作成、(3)校勘作業の実施を行った。成果の具体的内容は以下の通り。 (1)所蔵機関へ直接問合せを行うと共に、所属図書館を通じて複写について照会したものの回答が得られなかった。当該版本は本研究において最も重要な資料であり、複写が入手出来なければ大幅な計画変更が必要となる。次年度も引き続き複写入手に尽力したい。 (2)既に写真やデジタルデータを入手していた版本4種のうち3種(舒本・清籟閣本・徳聚堂本)を校勘作業のためプリントアウトおよびファイリングした。当初の計画では舒本・清籟閣本・四雪草堂訂正原本の3種校勘を予定していたが、研究中断の必要が生じたため、遅延を最小限に抑えるべく、本研究開始以前にサンプル調査を行っていた舒本・清籟閣本・徳聚堂本間の校勘を継続することとした。 (3)(2)で用意した3種版本の校勘作業を実施した。現時点で全体の36%(全100回中36回)が完了している。各版本間の文字異同(正字・俗字・通字の差異を含む)や本文節略の状況を確認するとともに、版面が近似する舒本・清籟閣本については版木の断裂痕や文字の間隔、補修状況等にも着目して調査している。文字異同や節略は小説本文の継承関係や改訂時期の考察材料となり、版面の特徴は原刻-覆刻関係の客観的判定材料となる。全量校勘が完了した後に、これらを総合して版本系統の推定に利用する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
産前産後および育児休業により研究を中断したため、全体的に作業が遅れている。加えて、複写請求予定の版本の所蔵機関へ問合せを行ったが回答が得られず、本研究において最も重要な版本の複写を入手する見通しが立っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
入手困難な版本の複写請求については、次年度改めて所蔵機関に問合せを行う。併せて当該版本の複写を所有する図書館の利用も検討する。複写が入手できない場合、全文校勘が極めて困難となるため、部分的な校勘や版本調査に計画変更する必要がある。 また、1種の版本(四雪草堂訂正原本)のプリントアウトとそれを用いた校勘作業が研究中断により実施できなかった。次年度は作業のスピードアップを図り、上半期には校勘作業を完了したい。既に校勘の済んだ部分において特徴的な用字や本文節略、版面の外観的特徴等をピックアップし、残りの校勘作業と分析を並行することを考えている。
|