2018 Fiscal Year Annual Research Report
歌会における懐紙・短冊のデータベース化と中世歌会制度の解明
Project/Area Number |
18H05606
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
今井 祐子 (高柳祐子) 東洋大学, 文学部, 准教授 (60821973)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 歌会 / 後柏原天皇 / 懐紙 / 短冊 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、陽明文庫のデジタル資料の調査及び龍谷大学大宮図書館への実地調査を行うことができた。龍谷大学では、「御会集」(歌会の歌を記録した歌集)の一つである『内裏御会』と、懐紙を一軸とした『公卿等和歌懐紙』の二つを子細に確認したところ、前者は『公宴続歌』の内容とほぼ重なるものであり、後者は慶長年間の懐紙をつないだものであることが判明した。これまで多くの御会集類を調査してきたが、規模の大小はあってもそのほとんどが内容的に『公宴続歌』と重なっている。御会集には、親本とよべるものがあったのか、あるいは記録すべき歌会の傾向が重なったのか、いろいろな可能性が考えられ、御会集の成立事情の解明は、歌会から御会集への流れを知る一つの手がかりになるのではないかと思われる。これまではデータベースの充実のために、御会集類は内容にのみ注目してきたが、次年度以降はそれらの書誌調査も含めて視野に入れる必要があると感じている。 また、当該研究の主たる対象である後柏原天皇代の短冊に関して、三種の大規模な短冊手鑑の存在(個人蔵)を知り、概要を確認することができた。これによって後柏原天皇代の後半(大永年間)の歌会データベースの充実をはかることができた。 以上、今年度は、後柏原天皇代の歌会データベースのさらなる充実が行われるとともに、慶長年間という当該期以外の歌会の情報も蓄積することができた。さらに、御会集の成立という視点が、歌会の立体的把握にとって重要な視点となるという知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースの作成という点では、予定通り進展している。 歌会の立体的把握という点では、御会集の成立に関して、書名も、伝来も全く異なるものが、ほぼ同内容を持つことが明らかになり、ここから歌会の復元ができるのではないかと考えるに至った。新たな視点を得たという点で、大きな進展があったと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
歌会の情報収集という点では、根本資料となる記録類、御会集の調査は、主たる研究対象である後柏原天皇代に限って言えば、ほぼ終えており、新たな資料を探して所蔵調査を行っても調査対象たる歌集をみつけるのが難しくなっている。この方面での調査は終了したと考え、今までの調査をいかしつつ御会集の成立の解明を目指したい。 また、今まで視野に入れなかった絵画資料(絵巻、記録の挿絵等)によって、ビジュアル的な歌会の復元を行うことを考えている。
|