2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K20821
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
根本 みなみ 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (70824324)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世大名家 / 官位昇進 / 家臣団統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度の成果を踏まえた上で、近世後期、特に天保期~嘉永期における大名の官位昇進と家中の関係性について、萩毛利家13代当主毛利敬親(慶親)を具体的な事例として分析を行った。 まず、昨年度以来継続している調査として、山口県文書館において、13代当主敬親の官位上昇に関わる史料の撮影収集作業を行った。この調査を通して、大名の官位昇進が家臣団、特に国元の家臣たちにどのように伝達されたのかという点を明らかにするとともに、昨年度の成果と比較することで、敬親治世における官位昇進の特質ついても分析を行った。このことにより、敬親以前の当主治世には、極めて制度的になされていた官位昇進の祝賀儀礼が敬親治世に入ると「御能」や「御意の申し渡し」など大名の官位昇進が家臣らも含めた「御家」全体の慶事であることを印象付けることを目指した儀礼が追加されるなど、変化が見られるようになったことを特徴として指摘した。 また、官位の上昇に対する家臣側の反応について分析するため、山陽小野田市立厚狭図書館所蔵の萩毛利家家老の厚狭毛利家文書の調査を行った。特に同館の所蔵する「御代官所日記」「御用所日記」の調査を通じて、大名の官位昇進時における国元家臣らの反応や参加できる祝賀儀礼について明らかにした。これらを通して、大名の官位昇進時における国元家臣らが参加可能な祝賀儀礼は従来想定されていたものよりも限定的であり、先述したように敬親治世に祝賀儀礼の追加が行われ、家臣団全体で官位昇進の意義を共有する機会が設けられたこととも関連していると考えられる。 以上の成果を踏まえた上で、本研究課題では大名の官位昇進という一つの出来事が「御家」という共同体のなかでどのように利用されていくのか、一連の祝賀儀礼の変容と関連づけながら明らかにした。これらの成果については、『歴史人類』48号に掲載されたほか、『地方史研究』への掲載が決定している。
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Research Products
(2 results)