2019 Fiscal Year Annual Research Report
伝統文化振興策の受容と流用に関する人類学的研究:台湾原住民の織物制作を事例に
Project/Area Number |
19K20840
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田本 はる菜 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 博士研究員 (20823800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 先住民 / 台湾原住民族 / 工芸・芸術 / 文化振興策 / 文化遺産 / 技術実践 / クラフトの人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、台湾におけるオーストロネシア語族系先住民(台湾原住民族)の手工芸制作と、近年の政府による伝統文化振興策の関わりについて、とくに国際機関や諸外国から導入された伝統文化保護に関する理念や制度が、先住民による手工芸品の制作・流通プロセスにおいていかに受容され、また独自に活用されるのかを明らかにしようとするものである。これまでの先住民の工芸・芸術研究が、土着の道具や技術の記録と保存を重視する物質文化研究と、先住民をとりまく政治的動向に関心をもつ先住民研究のもとで別々に行われる傾向があったことを踏まえ、本研究はモノの制作・利用を通じた先住民と文化振興策との関わりに焦点を当てることで、二つの研究動向を架橋しうる点で意義がある。 2019年度は、台湾での現地調査を実施するとともに、これまでの研究成果の整理を行った。とくに以下2点についての成果が挙げられる。(1)文化振興策が地域に浸透する過程で、工芸品の製作・流通においては、ローカルな市場を対象とする経営戦略や、先住民と漢人の間の日常的紐帯の活性化といった、政策的想定を超えた展開が見られることを明らかにした。この内容は査読付き学術論文として発表した。(2)作品制作を技にまつわる感覚の次元から捉えるとともに、制作中と完成後にまたがる社会的過程として記述しうる枠組みを得るため、現象学的人類学の関係論的技術理解を拡張するための理論的検討を進めた。研究期間全体を通じて、原住民族による伝統文化振興策の受容と流用についてのデータ収集と成果公表、分析枠組みの検討をおおむね順調に進めることができた。これらの内容を盛り込み、博士論文及びこれまでの研究成果に基づく著書を2020年度に刊行する予定である。
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