2018 Fiscal Year Annual Research Report
急速に経済発展するベトナム農山村地域において在来習慣が遺存する背景要因の解明
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18H05638
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
時任 美乃理 京都大学, 森里海連環学教育研究ユニット, 特定研究員 (20824220)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | モノカルチャー / ベトナム / ホームガーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
経済成長の著しい東南アジア諸国では,急速な都市化や産業の集約化に伴い,農村地域の社会システムが徐々に変化している。とりわけベトナムの山岳農村では多くの少数民族世帯が造林業に参入しており,生業のモノカルチャー化が進行している。一見すると造林業という現金収入源を獲得し貧困から脱したようにみえる少数民族世帯だが,実際には生活に様々な不安定性を抱えているのが実情である。災害や経済状況の変化に柔軟に対処できる高いレジリエンスを備えた生活構造の確立が急務であることから,本研究では,モノカルチャー化によって危惧される諸リスクへの対処手段としてホームガーデンにおける作物栽培に着目し,そうした人々の生存維持保障として維持されてきた生活習慣が現状も遺存している背景要因の解明を目指した。 初年度は,中部ベトナム山岳地域に位置するナムドンでの対象村にて現地調査を実施し,各世帯のホームガーデン作物および自然条件の把握するため,対象村における全世帯のホームガーデンにて栽培作物の調査を実施した。さらに,各世帯の属性および社会的背景を把握するため,各世帯に対し聞き取り調査を実施した。 途上国のモノカルチャー化に関する既往研究では,土地利用の面的な変化や従事世帯数の増加などによって地域全体における生業の偏りが示され,世帯レベルの単一生業への依存度も土地利用や現金収入源の偏り等によって評価されてきたが,本研究では初年度の調査結果をもとに,ホームガーデンのような既存の行政データでは把握することが困難な小規模な土地利用の情報をGISによって視覚化した。さらに,聞き取り調査から,現地で行われている食糧支援策の問題点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地の研究協力者および協力機関の事情で現地調査の実施が若干遅れたが,必要なデータは着実に収集することができ,解析も開始した。初年度の成果の一部は学会発表にて公表できており,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,収集したデータの解析を中心に行い,在来の作物栽培習慣が遺存する背景要因の解明を目指す。また,レジリエンスの高い生活構造を導く効果的な支援策の検討も行う。
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