2018 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological study on the Development of Transport Infrastructure and the Moving Bodies in Eastern Himalaya
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18H05643
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
古川 不可知 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 機関研究員 (00822644)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | インフラストラクチャー / ヒマラヤ / 身体 / 移動 / 環境 / モビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒマラヤ東部の山岳地帯に位置するネパール・ソルクンブ郡とインド・ダージリンにおける移動実践の観察を通して、山岳地帯における輸送インフラと人々の関係を分析することである。ともにネパール系住民の住むヒマラヤの山岳観光地であり、現在急速に車道建設の進むソルクンブと、長年にわたって舗装道や山岳鉄道が維持管理されてきたダージリンを比較し、①山中を移動する具体的なやり方、②移動が現地において持つ意味、③輸送インフラの発展が社会や人々の環境認識にもたらす影響、を明らかにする。 本年度は基礎データの収集フェーズと位置づけ、2018年9月および2019年2月~3月にネパールのソルクンブ郡にて、また2018年12月~2019年1月にインドのダージリンにて、三回の現地調査を実施した。 ソルクンブ郡では、車道建設現場の観察をおこない、沿道住民から車道をめぐる見解や開通後の生活設計などについて聞き取りをおこなった。また乗り合いジープのドライバー10数名にインタビューを実施し、山中の運転という実践をどのように認識しているのか聞き取った。加えて、バスパークの建設予定地となっているカリコーラ村の戸数や、郡庁であるサレリに乗り入れる全ジープ業者の情報など、車道がもたらす社会変化を分析するための基礎データを収集した。 ダージリンでは鉄道局や登山協会にて基礎資料の収集を実施したほか、乗り合いジープや山岳鉄道に乗り込む形で人々の実践を観察した。また数名のネパール系住民たちからライフヒストリーなどに関するインタビューを実施した。 現段階の成果として、山間部の輸送インフラは文字通りの生命線であり、計画に対して住民から強い期待が抱かれる一方、実際に建設が始まると変化の大きさに反発を抱く傾向が観察された。この点は「インフラストラクチャーとしての山道」として『文化人類学』83巻3号に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソルクンブ郡では実際に車道工事の監督者を務めたことがある人物をアシスタントとすることができ、とりわけ車道建設の現状に関して計画以上の情報を収集することができた。ダージリンに関してはほぼ計画通りの進捗であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の成果をもとに、引き続き二地点における調査を継続するものとする。ソルクンブ郡では、バスパークの予定地であり、2019年4月に車道が到達したカリコーラ村に焦点を絞り、新たな輸送インフラが社会と人々の環境認識に及ぼす影響を調査する。ダージリンでは前年収集した資料を踏まえて、山岳鉄道の運転士やジープドライバーから聞き取りをおこない、ソルクンブと比較可能な事例の収集を目指す。また国立民族学博物館の若手共同研究を組織し、異なった地域で調査をおこなう関心の近い研究者と情報交換することで、輸送インフラと人々のかかわりについて議論を多角化する。
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Research Products
(1 results)