2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス倒産手続と債権者個別訴訟との関係ー管財人の訴訟上の地位という視座からー
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19K20850
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
張 子弦 北海道大学, 高等教育推進機構, 学術研究員 (10822661)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 倒産法 / フランス法 / 破産管財人 / 詐害行為取消権 / 集団訴権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、倒産手続開始後、個別債権者による訴訟追行と破産管財人による訴訟追行との関係を究明することを目的とするものである。本年度に行った研究で得た主要な研究実績は、以下の三つから構成される。 ①債権回収の場面でよく利用されている制度としては、債権者代位権と詐害行為取消権、及び会社法における役員の第三者に対する責任に基づく損害賠償請求権という三つがある。フランスでは、この三つの中で詐害行為取消権のみが倒産時個別的権利行使の禁止という原則の例外とされている。2019年度に、報告者は、このようなフランス法における独特な制度設計の背景を究明するために、倒産の局面における詐害行為取消権に関する考察を進め、民事法研究会で研究報告を行い、論文の一部を公刊した(連載中)。 ②本研究では、フランスの倒産手続進行中に倒産手続の機関(管財人)が新たな詐害行為取消訴訟を提起することができるということを明確した。また、破産管財人による詐害行為取消請求が認められた場合すべての債権者が受益できるため、当該訴訟と労働事件における労働組合が労働者の代わりに提起した訴訟とが同種の訴訟様態として分類されている。この問題に関するフランス法の理論を概観するために、報告者は北大社会法研究会で「フランス労働法における労働者個別訴権の集団的行使」をテーマとする研究報告を行った。 ③日本破産法45条によると、倒産手続の開始により中断された詐害行為取消訴訟が破産管財人によって受継されることができる。これに対して、フランス法では、倒産手続開始後管財人のみならず債権者も詐害行為取消権を行使することができる。詐害行為取消権の債権者による行使及び倒産手続の機関による行使を許容する理由、両者の関係、倒産手続の機関の法的地位などを検討する必要がある。これらの問題について執筆中の論文を公表する予定がある
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の2年目は、フランス出張によって現地で収集した情報、意見交換の成果等を研究会で報告し、論文の形で公表することを予定していたが、多くの研究会が中止されているため、研究成果の公表は、当初の計画よりやや遅延している。連載している論文について、後半の内容を精緻化するために、もうすこし時間が必要である。 なお、当初は日本法の調査研究を行う予定であったが、2020年4月より日本改正民法(債権法)が実施され、日本法の調査を進めたところ、詐害行為取消権に関する新たな議論が存在していることが判明したため、改正法の下で新たな判例と学説の蓄積を待つ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半の研究では、まず連載論文を完成し、北大法学論集に投稿する予定である。いま取りこんでいる同論文においては、倒産手続の機関による詐害行為取消訴訟の効果、性質、同訴訟における倒産手続の機関の法的地位などの問題をより具体的に検討している。 2020年度の後半では、倒産手続における破産管財人に専属する訴訟追行権が、債権者の訴訟のどこまでを吸収するかという本研究の課題を深めるために、残りの「債権者代位権」、「役員の第三者に対する責任」に基づく訴権を素材として、日仏倒産法における判例と学説を考察する。そして、これまでの研究や調査で得た情報に新たな検討を加えて論文の形で公表することを予定している。 当初予定していた比較研究を完成するために、日本の改正民法(債権法)が施行された後、現れてきている新たな問題、判例を対象としての研究と分析を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は、日本の改正民法(債権法)の施行に伴って生じる新たな問題と議論を含めていくため、新しい関連文献を参照しなければならない。次年度の使用額については、日仏比較法の視角から学説と判例に対する検討・検証を完成するために、図書の購入に利用する。 また、研究代表者は2020年度に北海道大学から琉球大学へ移籍するため、北海道や東京で開催する研究会に参加するための旅費が必要となる。次年度の使用額は、国内旅費にも充てる。
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Research Products
(5 results)