2018 Fiscal Year Annual Research Report
行政組織上の契約及び委託契約の構造化――日独比較法研究を中心として
Project/Area Number |
18H05648
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 崇弘 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (30825683)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 委託行政契約 / 行政私法 / 行政組織法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、委託行政契約におけるエンドユーザーの救済を考えるに当たって重要な「行政私法論」の検討を行った。検討をするに当たっての素材は、大阪高判平成29年7月12日判例地方自治429号57頁である。この裁判例を検討した結果、以下の3点を明らかにした。 第1に、公害防止協定を締結するに当たり、行政主体に「行政上の権限」、すなわち一方的・高権的な処分をする権限が無い場合には、当該公害防止協定は私法上の契約と同視され得るということを明らかにした(ただし、私法上の契約と同視され得る場合でも、当該公害防止協定の法的拘束力の有無を判断するに当たっては、行政法上の一般原則に関する審査が行われるという特殊性を有している)。 第2に、公害防止協定に対しては、比例原則が適用されると考える説が有力であるものの、その適用を主張する根拠は十分に検討されていない、ということを明らかにした。すなわち、ある論者は「行政主体が、政策目的を達成する手段として規制ではなく契約を選ぶことによって」行政法上の一般原則「の要請を免れることがあってはならない」ということを理由にするが、少なくとも行政主体が規制権限を有しないときはこの理由は当てはまらず、仮に比例原則を適用されるのであれば、その理由は、行政主体が一方当事者であることに求めるしかない、ということを明らかにした。 第3に、判決の検討を通じて、行政契約の類型論の試論を明らかにすることが出来た。すなわち、行政契約を侵害又は給付によって切り分けるのではなく、行政主体の地位という視点から、従属・対等で大きく切り分け、前者の小区分として侵害、給付、組織(例えばPFI法第22条の公共施設等運営権実施契約)などを用い、後者の小区分として契約の対象(例えば民営化であれば再分配される任務・組織)や行政主体の相手方当事者の属性(行政主体か私人か)を用いる、という試論を提示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の重要課題である、行政主体が私法形式で活動する場合に如何なる法規範が適用され得るかという論点に関する研究成果を公表した。具体的には、(1)公害防止協定(行政契約)の法的性質を分析するに当たっては、一方当事者である行政主体に一方的な規制権限が存在するか否かが重要なメルクマールになりつつあること(このメルクマールは、行政契約の類型論にとってもメルクマールたりえる)、(2)契約の他方当事者である私人の権利救済にとって重要なのは平等原則・比例原則ではあること、(3)とはいえ比例原則が公害防止協定に適用されるか否かは依然として意見が分かれており、また比例原則が適用されるとしてもその根拠も種々有ること(その中でも契約の一方当事者が行政主体であるということを根拠にする学説が一定程度見て取れる)ことを明らかにした。これらから、まずは二面関係での行政契約における私人の救済に関する一定の手掛かりを得ることが出来た。 また、本年度に研究成果を公表するための資料(ドイツにおける家庭系廃棄物の収集・運搬に関する委託に関する資料)の収集も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度も研究実施計画に従い、順次研究成果を公表する。
|