2019 Fiscal Year Annual Research Report
財産と納税者の関係変化を軸とする所得課税の規範的検討
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19K20853
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
住永 佳奈 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (60826519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 租税法 / 所得課税 / 生命保険信託 / 減価償却 / 人的資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実現主義に依拠する所得課税における、財産所有が終了する時における課税の公平を、[1]課税の契機と、[2]財産の種類の2つの観点から探究し、所得課税における実現の意義を明確化することを目指すものである。 本年は、昨年と視点を変えて、財産の所有中の、財産の使用によって獲得される所得とその財産の取得費の控除との関係性に着目して、芸術作品である楽器の減価償却に関する研究を行った。実現主義(すなわち譲渡時の課税)と、取得原価主義(すなわち譲渡時まで取得原価を維持すること)とはコインの表裏であるとされる(岡村忠生・酒井貴子・田中晶国『租税法(第2版)』91頁(岡村執筆部分)ため、所有中の課税は所有終了時の課税に関係する。 具体的には、Simon判決(Simon v. C.I.R., 103 T.C. 247 (1994))に基づいて、一般に耐用年数がない、あるいは時間の経過による価値の減少が生じないため減価償却できないといわれる芸術作品について、プロの音楽家による使用、所得獲得および、使用による楽器の価値減少がある場合は、租税法は財産のどのような価値や状態に基づいて減価償却、つまり所得から財産の取得に要した金額を費用として控除することを認めるかを探究した。その結果として、Simon判決は、鑑賞や蒐集などに資する内在的価値と事業において所得を生み出す元手としての性質とを併せ持つ財産について、米国内国歳入法典168条の解釈に依拠して、事業で活発に使用される資産に減耗および損耗がある場合は芸術作品であるかどうかに関係なく減価償却を認めたものであることを明らかにした。また、内在的価値と減価償却できる価値との区分という考え方は、物的資本のみならず人的資本の取得に対する支出へも応用しうることを論じた。
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Research Products
(3 results)