2018 Fiscal Year Annual Research Report
Legal Systems under the Companies Act relating to Succession of Family Business
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18H05650
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲 卓真 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (80825018)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 株式の相続 / 事業承継 / 株式の共有 / 会社法106条 / 権利行使者 / 議決権の不統一行使 / 同族会社 / ファミリービジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、同族会社の株式の相続を会社法全体としてどのように規律するべきなのかである。これを明らかにするために、本研究では、同族会社の株式の相続に関係し得る会社法上の諸制度についての研究を行い、これらの制度を横断的に検討する。 平成30年度は、同族会社の株式の相続に関係し得る会社法上の諸制度のうち、主に、会社法106条の権利行使者制度に焦点を当てて研究を進めた。会社法106条は、同族会社の大株主が死亡してその株式が複数の相続人によって準共有されることになったという場面に主として適用される。そこで、このような場面の規律として、より円滑な事業承継を実現するためにはどのような規律が望ましいのかを検討した。 具体的には、まず、会社法106条と類似するドイツ株式法69条および有限会社法18条に関する学説や裁判例を考察した。その結果から、会社法106条の目的を検討する際の手がかりを得た。また、同族会社の株式が相続された事案を類型化して、それぞれの類型において望ましい規律がどのようなものなのかを分析した。さらに、松田二郎が主張していた株式債権論や民法の共有に関する議論を踏まえて、望ましい規律を実現するための法的構成を検討した。 その結果、まず、会社法106条の目的が、準共有者による一体的な権利行使の確保、および、準共有者間の内部関係の不明確性からの会社の保護にあるということを明らかにした。そのうえで、これらの目的に照らして会社法106条の解釈論や立法論を展開した。また、より円滑な事業承継を実現するために、準共有者間の内部関係において、各準共有者による議決権の不統一行使の主張を認めるべきであるという結論に至った。そのうえで、これを実現するための法的構成を提示した。 以上の研究成果は、それまでの研究成果と併せて書籍にまとめて公表するとともに、各種研究会でその一部について研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、「研究実績の概要」で述べたように、同族会社の株式の相続に関係し得る会社法上の諸制度のうち、会社法106条の権利行使者制度について研究を進めたところ、その研究成果は、それまでの研究成果と併せて書籍にまとめて公表することができ、また、各種の研究会においてもその一部について研究報告を行うことができた。この権利行使者制度は、同族会社の株式の相続に関係し得る会社法上の諸制度の中でも、実務上問題となることが比較的多いと思われる重要な制度である。したがって、本年度にこの制度に関する研究の成果を得ることができたことは、本研究全体にとっても望ましいことである。よって、現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、同族会社の株式の相続に関係し得る会社法上の諸制度のうち、会社法106条の権利行使者制度以外のものについて研究を進める予定である。具体的には、株主名簿制度や株式売渡請求制度に焦点を当てる予定である。これらの制度について検討を行う際には、ドイツ法だけではなく、アメリカ法や法の経済分析に関する知見を参照することを試みる。
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Research Products
(5 results)