2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H05677
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深井 太洋 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (50828803)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 保育政策 / 公定価格 / 政策評価 / 待機児童 / 女性の就業 / 集積分析 / 構造推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認可保育所への補助金を増やした時に、保育所の受け入れ可能人数がどれだけ増え、それによって家計の行動(出生行動や女性の就業)がどのような影響を受けるのかを評価することである。平成30年度は主に、「社会福祉施設等調査」の個票データを使用し認可保育所の運営費制度が各保育所の受け入れ定員の設定に与える影響に関する分析を行った。認可保育所への待機児童の問題が現在も続いている日本において、本研究は重要なものであると考える。以下に、分析の結果をまとめる。 認可保育所の運営費は、各保育施設の定員に依存して設定されるような制度設計となっている。このように認可保育所の定員ごとに異なる運営費制度が各保育所の定員決定に与える影響について、まずは経済モデルを設定し制度を考慮したうえで理論的な予測を行った。次にモデルの予測と実際のデータが合うようにパラメターの推定を行った。分析の結果、定員に応じて額が変化するような運営費制度は各保育所の定員決定に有意な影響を与えていることがわかった。推定されたパラメターを利用して運営費額の決定制度を変更することで、現在の受け入れ定員を維持しつつどれくらいコストを削減できるかのシミュレーションを行ったところ、約20%コストを削減することができる可能性が示唆された。分析の結果は東京労働経済学研究会(東京大学)及び第1回CREPE Conference(東京大学)において報告されている。 また、保育所の整備と家計の行動に関しては、国内の研究動向をまとめ今後の研究課題を整理したものが日本労働研究雑誌に掲載予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、「社会福祉施設等調査」の調査票情報の整備を行い、運営費制度が認可保育所の定員設定に与える影響を分析するところまで研究を進めることができた。まずはじめに、経済主体である認可保育所の施設長の意思決定をモデル化し、そのモデルにおける現在の運営費制度のもとでの最適解を計算した。次にモデルにおける予測と、実際のデータが合うような形でモデルのパラメターを推定し、推定されたパラメターを用いたシミュレーションを行っている。分析の結果は、東京労働経済学研究会及び第1回CREPE Conferenceで報告しているなど、順調に研究が進められている。 保育所の整備と女性の就業に関しては、これまでの先行研究と今後の研究課題をまとめた論文が日本労働研究雑誌に掲載予定となるなど、分析の準備が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、(1)保育所を利用することで女性の就業率がどの程度上昇するのかを、政策評価の手法を用いて分析する。特に、育児休業を終えた頃である0~2歳の低年齡児の母親に焦点をあて、出産前後の就業継続に保育所がどのような役割を持っているのかを分析する。(2)認可保育所運営にかかる補助金額に、保育所の定員(規模)によって非連続に変わるような現在の制度を利用して、補助金額に関する保育所定員数の弾力性を推定する。 平成31年度前半は(1)の分析については、21世紀出生児縦断調査(厚生労働省)、就業構造基本調査(総務省)や国勢調査(総務省)を用いて分析を進めていく。データの整備はすでに終えているため、保育所が外生的な要因で増えた地域と増えなかった地域の特定を中心に行い、分析を進めていく。(2)については、平成30年度の報告で受けたコメントをもとに修正を行い、国外の学会(AASLEなど)での報告を行う。平成31年度後半では、(1)と(2)の分析結果を合わせることで、保育所の運営費制度を変更したときの保育所の定員変化、それに伴う女性の就業率の変化に関する分析を行い保育政策の費用便益に関する計算を行う。
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