2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Medium to Long Term Effects on Women's Wages by Taking Maternity Leave and Returning to Work
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19K20880
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 真紀 (横山真紀) 東京大学, 社会科学研究所, 特任研究員 (00826852)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 両立支援制度 / 育児休業制度 / 短時間勤務制度 / 賃金ペナルティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、育児休業制度や短時間勤務制度などの両立支援制度を利用することが、女性の出産後の賃金にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的として行われた。 本研究の前提となる問題意識は、2015年に実施された『第15回出生動向基本調査』における、育児休業制度を利用した就業継続の増加、及び、2010年の制度義務化による短時間勤務制度利用の増加である。両制度については、法定以上に手厚い制度整備を行っている企業も多くみられ、長期的な制度利用に関して、既に事例研究によってキャリアへのマイナスの影響が指摘されていた。 申請者はこれまでクロスセクショナルデータを用いて、2年以上の制度利用が女性の復職後の賃金にマイナスの影響を与えることを指摘していたが、クロスセクショナルデータによる結果は、データからは観察できない個人の異質性の影響を受けている可能性がある。そこで本研究ではパネルデータを用いて制度の利用が賃金に与える影響に関する分析を行った。パネルデータは同一の個人の変化を拾うため、固定効果モデルを用いれば、上記で述べたような観察できない個人属性による差異の影響を受けない推計を行うことができるためである。その結果、同一の個人で見た場合には、短時間勤務制度を利用することは、雇用を正規雇用から非正規雇用に切り替えた場合は賃金に対して有意なマイナスの影響があるが、正規雇用のままであればむしろ時間当たり賃金を上昇させる効果を持っていた。しかしこれは出産後1~2年の非常に短期の影響であり、また、福利厚生の影響を過剰に拾ってしまっている可能性がある。 サンプルサイズの問題から中長期の影響を十分に見ることが本研究ではできなかったため、この点を今後の課題とし、精緻な分析に取り組んで行きたい。
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