2021 Fiscal Year Research-status Report
プロイセンの国民経済の形成期に多国籍化する家族企業の利害構造の解明
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19K20887
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
竹原 有吾 学習院大学, 経済学部, 准教授 (80823591)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宮廷ユダヤ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで実施してきた研究を通して、一族のメンバーがそれぞれ国境を越えて各地で商業活動に従事していたことに関して、そうした商業活動の事例のすべてが同じ一族の出身者によるものであったというだけで、それを特定の一族の経済活動として一括りに捉えることには問題があることに気付いた。そこで当時の人々が一族の枠組みをどのように理解していたのかがわかる資料も分析対象に追加することにした。これによって研究の中で分析対象とする一族が増え、これまで研究対象としてきた一族について、当時のユダヤ人の同業者がどのように見ていたのかについても考察できるようになった。そこで改めて一族の国際的なネットワークがどのように形成されていったのかについて考察を加えていくことにした。具体的には、宮廷ユダヤ人と活発に商取引を行っていた人物の回顧録(グリックル・バス・ユダ・ライプの回顧録)を用いながら、本研究で分析対象としてきた宮廷ユダヤ人の一族が、各地でビジネスを展開するようになっていった経緯を探っていった。その回顧録にはドイツ各地の宮廷ユダヤ人との商取引の実態や婚姻関係の形成について描かれていたため、本研究で分析対象としてきた宮廷ユダヤ人の一族が、回顧録の執筆者の一族と婚姻関係で結ばれることになった経緯がよくわかり、宮廷ユダヤ人が国際展開していった過程をより詳細に把握することができた。この分析結果は立教大学経済史・経営史ワークショップで報告した。 この回顧録の分析を通して、本研究で分析対象としてきた宮廷ユダヤ人の国際的なネットワークが、想定よりも多くの裕福なユダヤ一族を巻き込んで形成されていたことが見えてきた。そのため、なぜそのように多くの一族が関わることになったのか、宮廷ユダヤ人の商取引や婚姻関係の実態について、より多くの事例を調べていく必要が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
追加の史料調査が困難な中で、国内で収集可能な文献や公刊史料を利用することで、課題の解決に向けて、研究に進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を踏まえて、プロイセン王国の宮廷ユダヤ人と親戚関係や商取引があったプロイセン国外の宮廷ユダヤ人についても分析を進める。そして研究の成果を論文としてまとめる。
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