2018 Fiscal Year Annual Research Report
Collaborative Innovation and Strategic Development in Technological Systems: A Perspective from General Purpose Technologies
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18H05694
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
閔 承基 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任助教 (40828670)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 技術経営 / 経営戦略 / イノベーション / 研究開発 / 企業間分業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、技術システムの企業間分業に着目し、イノベーションおよび企業成長につながる企業行動を考察することである。本研究では、企業行動の中でも「多様性」の意思決定に焦点を当てており、企業の多様性を(A)技術(製品・事業)、(B)顧客(産業内の市場)、(C)産業(産業間の市場)の3つの範囲に細分化して検討している。また、(B)顧客と(C)産業の多様性に関しては、グローバル化および国際分業の視点も取り入れて研究を進める。 平成30年度に実施した研究内容は主に次の2つに分けられる。第一に、定量分析の実施である。事例分析に先立ち、既存研究のレビューから問題意識を明確にし、適切なデータ資料の収集およびデータセットの構築を行った。その後、収集した自動車産業の企業間分業のデータセットを利用して、「顧客多様性および製品多様性が企業の成果に与える影響」について定量分析を行った。その分析結果は、顧客多様性と製品多様性の同時追求が企業成果に正の影響を与えうる可能性を示唆している。当該の研究成果については英文雑誌に投稿し、「Management Review: An International Journal」13巻2号に掲載された。 第二に、定性調査の実施である。国内ではディスプレイ・半導体製造装置メーカーおよび部材メーカーを訪問し、技術システムの変化に伴う技術開発戦略の対応について調査を行った。また、海外では中国の上海・蘇州の日系メーカーおよび中国地場メーカーを訪問し、新興国の企業間分業の実態と技術開発戦略についてインタビュー調査を行った。定性調査内容の分析・解釈は追加的な事例研究を加えて、比較分析として実施していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題である(A)技術(製品・事業)、(B)顧客(産業内の市場)、(C)産業(産業間の市場)の3つの多様性の効果のうち、平成30年度においては(A)技術・製品多様性と(B)顧客多様性の効果を定量的に実証することができた。この研究成果は「When Does Product Diversity Improve Performance? The Moderating Role of Customer Scope Strategy」というタイトルで、英文雑誌「Management Review: An International Journal」に掲載された。勿論、ロバストな結論として仕上げるには追加的な検証を必要とするが、既存の知見に対して一つの新たな仮説を提示できたことは学術的に重要な意味を持つと考えられる。 また、上記の学術論文としての公表に加えて、当初の計画通りにデータセットの収集・構築を行えたこと、新興国に進出した企業への訪問調査を実施できたことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)には、引き続き(A)技術と(B)顧客の多様性に加えて、(C)産業の多様性の効果について実証していく。定量分析については、特許データを収集して技術多様性を測定し、その効果を定量的に検証していく。産業の側面においては、半導体産業とディスプレイ産業を中心に企業間の分業、提携関係に関する資料を入手して分析する計画である。 また、当初の計画通りに、定性的な調査・分析も進めていく。幅広い文献調査を行って取り組むべき課題を明確にすると同時に、その問題解明に相応しい企業を選定してインタビュー調査を実施する計画である。調査対象の産業・企業は、(1)ディスプレイ産業や半導体産業用の製造装置メーカー、(2)同産業の部材メーカーとしつつも、比較分析の必要性が生じる場合には(3)電子産業や自動車産業などの生産財メーカーに対する調査も行っていく。インタビュー調査の計画としては、約2~3回の日本国内拠点の訪問調査、約1~2回の海外拠点の訪問調査(主に、東アジア拠点)を実施する予定である。 本研究の調査・分析結果は基本的に国内外の学会で発表し、学術論文として公表していく。また、平成31年度(令和元年度)には、主に研究者を対象とした学会報告のみならず、実務家を対象としたコンファレンスでの報告も予定している。このような場で得たフィードバックをもとに本研究をより精緻化し、研究成果を学術誌に投稿・発信していく計画である。
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