2019 Fiscal Year Research-status Report
成長と分配を両立させたマクロ経済分析の可能性―ロバートソン経済学の再検討―
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19K20906
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
仲北浦 淳基 同志社大学, 経済学部, 助教 (70823095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済学史 / 経済思想史 / ケンブリッジ学派 / 分配論 / 企業組織論 / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
①ロバートソンの分配論: 1920年代から30年代におけるロバートソンの諸論文から,特に事実解明的な分配論,1950年代におけるロバートソンの諸講演から,特に規範的な分配論を抽出して整理した。ロバートソンは戦後社会主義の賃金平等主義的な傾向に反対論を展開していたことが明らかになった。彼は,賃金上昇による労働者の生活基準の上昇を重要とみなしつつ,人為的な賃金の引き上げは,実業家への報酬(分配)を圧迫することで,事業の供給を減少させ,結局は労働者の生活基準を著しく低下させる,という主張を展開した。つまり,労働者への分配のみを強調するのではなく,実業家(労働者)への分配にも配慮し,両者の適切なバランスを検討しなければならない,と主張していたのである。
②ロバートソンの企業組織論: 個人の行動原理から国民経済を捉える過程において,ロバートソンは中間的な組織(企業・産業)を想定していた。そこで,彼が,諸個人の集合体である企業組織をどのように捉えていたかを明らかにした。彼の企業組織論においては,組織内の各経済主体(資本家,労働者,株主,金融家など)の意思決定の「管理可能性」が強調されていることが分かった。
③テキストマイニング研究: 様々な方法論が乱立しているテキストマイニングの手法を,経済学史研究に応用するための考察を行った。特に質的分析と量的分析の接合部である「コーディング・ルール」の作成について1つの方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年度に英国等で入手した「ロバートソン文書」に関して,事前調査ではその分量が公開されておらず把握できなかったが,実際の分量が当初想定していたよりも膨大であったため,資料整理に予想以上の時間がかかっている(作業は現在も継続中)。それにより,当初予定していた学会報告や論文執筆の時期が大きくずれ込んでしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の上半期に「ロバートソン文書」の整理をひと段落させ、下半期には、とくに経済成長と再分配(財政を含む)に関する文書を翻刻し、研究を進める。経済成長と再分配のそれぞれに関して、今年度中の学会報告と論文執筆を目指す。また、テキストマイニングに関しても、その分析手法の研究を継続し、学会・研究会等で、新たな問題を提起し対策を提案する。
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Causes of Carryover |
2018年度に英国等で入手した「ロバートソン文書」に関して,事前調査ではその分量が公開されておらず把握できなかったが,実際の分量が当初想定していたよりも膨大であったため,資料整理に予想以上の時間がかかっている(作業は現在も継続中)。それにより,当初予定していた学会報告や論文執筆の時期が大きくずれ込んでしまったため。 次年度は、学会報告および学会参加の交通費として旅費160,000円、手書き資料の翻刻サービス利用料としてその他140,000円を使用する計画である。
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