2020 Fiscal Year Research-status Report
成長と分配を両立させたマクロ経済分析の可能性―ロバートソン経済学の再検討―
Project/Area Number |
19K20906
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
仲北浦 淳基 大正大学, 地域創生学部, 助教 (70823095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経済学史 / 経済思想史 / ケンブリッジ学派 / D.H. ロバートソン / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マーシャルの系譜をひくD.H.ロバートソンのマクロ的経済理論と人的ネットワークに注目することで、再分配論(厚生論)を維持した経済成長論の可能性を探ることである。そのために、従来、ほとんど研究されてこなかった1930年から1963年(「マクロ経済学」の草創期・発展期)におけるロバートソンの著作・書簡に焦点をあてる。また、分析にはテキストの量的解析(テキストマイニング)も併せて行う。 これらの目的を念頭にして、2020年度は以下の研究を行った。 ①ケンブリッジ学派としてのロバートソンのマクロ経済分析(経済変動論):ロバートソンがケンブリッジ大学で経済学を研究していたころの文献と未公開資料(A.C.ピグーの書簡)を分析することで、彼の経済変動論が、ケンブリッジの外部の理論(特にアフタリオンをはじめとするフランス流の経済変動論)ではなくケンブリッジ学派の枠組みの中で醸成されていったことを示した。 ②ロバートソンの貨幣観:ロバートソンの専門領域は貨幣論・金融論とされることが多いが、彼は貨幣論・金融論においても貨幣的現象に通底する実物的側面をつねに重視していたことをテキストマイニング分析から示唆した。 ③テキストマイニング研究:テキストの質的分析と量的分析の接合部とも呼ぶべき「コーディング・ルール」は、その作成段階において恣意的になってしまう場合がある。その危険を最小限にし、なるべく客観性を保った「コーディング・ルール」を作成するための手順を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に英国等で入手した「ロバートソン文書」に関して、事前調査ではその分量が未公開で把握できなかったが、実際の分量が当初想定していたよりも膨大であったため、資料整理に予想以上の時間がかかっている。また、手稿の翻刻に関して、ネイティブの翻刻専門家でも翻刻不能なものが多く、想定以上に困難を極めている。ただし、昨年度よりも翻刻作業と資料整理は着実に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた「ロバートソン文書」の整理作業には数年を要すると見込まれるため、まず今年度はケンブリッジ学派の経済学者との書簡や、ロバートソン自身の経済理論(特に経済成長論と再分配論)が書かれているものを中心に整理と分析を進める。さらに並行してテキストマイニング分析も行う。
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Causes of Carryover |
全ての出張が取り止めになったことと、翻刻サービスの納期が滞ってしまったことによる。次年度使用額は、すでに計画されている出張と当該の翻刻サービスへの依頼に使用する。翻刻サービスは上半期中に依頼する予定だが、研究遂行や翻刻サービスの状況によっては次年度末までかかる場合にも配慮する。
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