2019 Fiscal Year Research-status Report
未就学児を持つ母親のスマートフォンなどのICT利用ー育児資源としての可能性の検討
Project/Area Number |
19K20910
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岡村 利恵 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任講師 (30826607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ICT / 未就学児 / 母親 / 生活充実感 / ワーク・ライフ・バランス / 育児資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、未就学児を持つ母親が子育てにおいてどのようにスマートフォンやタブレットなどを子育てに用いているのか、そしてそのことが母親の育児資源としてどのように作用するのか明らかにすることである。 令和元年度は本研究についてこれまでの分析結果や考察をもとに、学部生、院生、教員を対象とするシンポジウムで「『スマホ育児』に関する社会学的考察の試み」として発表を行った。日本、韓国、米国、スウェーデンの4ヵ国のデータ分析から、育児困難を感じる母親ほど、スマホやタブレットの子育てへの利用頻度が高くなるという共通の結果が得られたこと等を紹介し、ICTを通じて、子育て支援にかかわるさまざまな情報が、より質の高い形で提供されることの重要性を研究者に限らずより広い対象に向けて発信することができた。 また令和元年度は日本と韓国の未就学児を持つ母親の比較研究も試み、ITを介した子育て情報検索が母親の生活充実感に与える影響について、実親・義親からの育児サポートと夫の育児参加、夫からの情緒的サポートも含めたモデルで分析を行い、ITを介した子育て情報検索は実親・義親からの育児サポートと夫の育児参加、夫からの情緒的サポートとは異なり、母親の生活充実感に統計的に有意な影響を与えていないこと,育児資源としては限界があることを明らかにした。これらの結果について令和元年9月の日本家族社会学会で口頭発表を行い、他の研究者から今後の研究に有意義なコメントを多数得ることができた。また子育て世代のソーシャルキャピタルに関する文献紹介も1本発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は国内学会で1本、国際学会で3本の計4本の発表報告を実施することができた。うち1本は中国出身の研究者との共同発表であり、日本と中国の育児資源について、量的分析と質的分析の両方の知見に基づいて考察を深めることができた。日本も中国も子育てにおけるスマートフォンやタブレットの利用は家族生活において特別なものではなくなってきており、より広い枠組では育児資源だけではなく教育資源としてもフォーマルな意味を持つようになってきている。 これまでは未就学を持つ母親に対象を絞って分析を行ってきたが、令和元年度には新たに別の調査を設計、実施し、ICTの子育て利用だけではなく、家事の外部化を図るためのアプリサービスの利用や、母親の疲労感、ワーク・ファミリー・コンフリクト(生活と仕事の対立)との関連から見る子どものスマートフォンやタブレット利用についての質問項目を盛り込んだ。今後は国際比較に拘らずに、日本の働く母親を対象にして、仕事と家庭の負担が大きい、いわゆるセカンド・シフトの状況ある母親がICTをどのように生活に取り入れているのかについて考察を深めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、より良い子育てにスマートフォンやタブレットがどのように活用できるのか検討を進めながら、さらに働く母親のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)という側面についてもICT利用の影響を明らかにしていきたい。 子育てにおけるIT利用は現在アジアの国々でも様々な議論をもたらしているものの、新興国における研究の蓄積は非常に限られている。また、コロナウィルスの世界的な感染拡大への対応として多くの国で保育園や学校が封鎖され、通常とは異なる家族生活への適応を要した。子どもが家庭で過ごす時間が長くなったことで、親子のスマホやタブレットの使用時間及び使用頻度が格段に増加したと予測できる。量的研究、質的研究いずれのアプローチをとったとしても今から得られるデータは回顧的なものとなってしまうが、こうした緊急事態とされる状況下において、子育てにICTがどのように利用されるのか、本課題に関連する研究としてまとめておく必要があると考えており、今後フォーカスグループインタビュー等でデータを収集することを予定している。
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Causes of Carryover |
令和元年度に所属先が変更となり、当初予定していた調査の実施が困難となったため。しかしながら、研究に必要となるデータは所属機関で実施した調査によって得られたため、次年度使用額が生じた。翌年度分とした請求した助成金は主にデータ整理のための人件費や設備費として使用する計画である。
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