2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Grief Care for children living in child care facilities
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18H05718
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukushima College |
Principal Investigator |
八木 孝憲 福島学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70827344)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / グリーフケア / デルファイ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究成果】
児童養護施設におけるグリーフケアの開発を目的として,本年度は児童が施設生活のなかで経験する喪失体験とその際に示すグリーフの実態を明らかにするため,施設職員を対象とした質問紙を作成した。質問紙作成に際して,ランダムに抽出した5施設職員及び大学教員3名を対象に予備調査を実施した。 質問紙はフェイスシート・喪失体験に関する子どもにとっての重大度・発生頻度・扱いにくさ・施設の対応・グリーフケアの認知度、について全62項目で構成されている。調査対象は(福)全国児童養護施設協議会の一覧からランダムに抽出した200施設であり、郵送をし返送待ちの状態である。 また、グリーフケアを実施している団体を3カ所訪問し、主に死別を経験した児童へのグリーフケアの実施状況やプログラムについて情報交換を行った。グリーフケアの認知度に関しては、施設ごとに温度差があり、ことに心理職の問題意識が大きく影響していると現状では推測される。認知度に差異はあるものの、グリーフケアの必要性は感じており、今後のケアプログラムの開発が求められるは確かであろう。おそらくは、認知してもらうところから実際のケアに至るまで、段階的なプログラム構成が必要とされると思われる。 施設によっては、グリーフに特化したものではないが、喪失体験に関連する子どもの心理的負担を軽減するためのプログラムを整備しているところもあり、その内容を精査し開発するプログラムに組み込んでいくことも視野に入れる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状としては質問紙の返送が始まっており、現在約50施設のデータが集まっている。今後も引き続きデータは増加していく予定である。この質問紙のデータ化と並行して、グリーフケアの開発に向けて心理療法専門職に対する調査も随時準備が進んでいる。専門職への調査はデルファイ法に即して実施し、児童養護施設で暮らす子どもたちが抱えやすいギリーフを明確にし、現場レベルで実践可能なケアプログラムの開発を目指している。 ここまでの進捗状況としてはおおむね順調であり、いまのところ大きなトラブル等はなく推移している。また、これまでの研究の推進方法などについては、都度関連領域の専門家に相談しながら進めており、今後も研究推進においては第三者の客観的な視点を参考にしながら、研究倫理を遵守し妥当性のある取り組みをおこなっていくものである。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダムサンプリングによる対象200施設への質問紙発送が完了し、少しずつ返送されてきている状況である。施設職員に数年間を振り返ってもらい,その間の施設児童にとっての喪失体験の内容や頻度,その時の子どもの反応などについてのデータを収集した。6月末までに質問紙の内容を分析し、児童養護施設におけるグリーフケア実施に際しての現状把握及び課題を明確にし、施設職員に対する調査を通して,施設児童が日々の施設生活の中で経験している喪失体験の内容や頻度,またその後の子どもの反応(グリーフ),それに対して行われている支援内容についての実態を明らかにする。 第1研究の成果をフィードバックすることを兼ねて,一定の経験年数を持つ施設心理職を対象としたデルファイ法による調査を実施し,心理的側面から施設児童のグリーフケアにおいて必要,かつ重要であると考えられる支援方法の抽出に取り組む。なお,デルファイ法とは「調査-分析-フィードバック-調査」というように回収した調査結果を提示した上で,同一の専門家に質問紙調査を実施することにより,意見の集約を行う方法であり(Polit & Beck, 2008/2010),専門家間の合意が取れた知見を得るために用いられる調査法である。 従来から施設児童への心理的な支援の必要性は指摘されてきたが,施設生活の中で日々経験していると考えられる喪失体験に焦点を当てた実践や研究は報告されていない。本研究ではそうした喪失体験やグリーフの実態を明らかにし,必要とされる支援方法の開発に取り組む。こうした研究成果は報告書や学会発表等を通して施設現場にフィードバックされ,施設児童の心理的な支援の拡充につながると考えらえる。
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