2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K20915
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Fukushima College |
Principal Investigator |
八木 孝憲 福島学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70827344)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / グリーフケア / 全国調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ 問題と目的 施設児童の喪失体験やそれに伴うグリーフケアについての研究,実践はほとんど行われていない。そこで,本研究では施設児童が体験する喪失体験やそれに伴うグリーフ体験の実態とその必要性を明らかにすることに取り組んだ。 Ⅱ 方法 Goldman(2000)が示した子ども時代に起こりうる喪失をもとに喪失体験を具体的に挙げ,その内容について施設心理職経験者2名で検討し質問項目を作成した。それらの項目についてどのくらいの頻度で発生しているかと職員にとっての扱いにくさを尋ねた。2018年11月~2019年6月に全国の児童養護施設に調査票を郵送し,主任等に回答してもらった(回収率32.8%:164/500施設)。 Ⅲ 結果 施設児童が経験する喪失体験の頻度を回答してもらった。最も頻繁に発生していたのは「実習生との別れ」で3割を超える施設で月に1回以上,経験している実態が明らかになった。この他「家族との面会交流の途絶」など,施設児童は高い頻度で何らかの喪失体験をしていること明らかになった。また,職員が考える喪失体験の扱いにくさを5件法で尋ね,扱いにくさを得点化した。最も得点が高かったのは「家族の死」(3.34)であり,逆に最も得点が低かったのは「実習生との別れ」(0.80)であった。扱いにくさがどのような要因によって規定されているかを明らかにするため,主成分分析を行った。第1主成分への負荷量が高かった項目を見ると,入所に伴う支援者やコミュニティとの別れなど,慣れ親しんだ環境との別れの要素が含まれていた。一方,第2主成分への負荷量が高かった項目は,死のように二度と会えなくなるような心理的ダメージが大きな別れの要素が含まれていた。以上のことから,施設児童に対する心理的ケアについて考える際,施設生活の中で少なくない喪失を体験していることを考慮し,必要に応じてグリーフケアを行う必要がある。
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Research Products
(1 results)