2018 Fiscal Year Annual Research Report
ひとり親世帯の階層状況と就労・世代間再生産に関する社会学的研究
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18H05721
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
斉藤 知洋 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (00826620)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ひとり親世帯 / 社会階層 / 貧困・低所得 / 就労自立支援 / 地位達成 / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,研究課題に関する基礎的分析を既存の公的統計データの二次分析を通じて行った.特に焦点をあてたのは,(1)シングルマザーの正規雇用就労が世帯の経済的ウェルビーイングに及ぼす影響と(2)高校生の教育期待・大学進学行動に対する貧困・低所得の効果,の2点である. 現時点の暫定的な知見は次の諸点にまとめられる.第1の研究課題については,正規雇用者/非正規雇用者の間に存在する個体属性の差異を傾向スコア法によって統制したうえで,正規雇用就労の因果的効果(ATET)を推定した.その結果,シングルマザーの正規雇用就労は,時間当たり賃金率を約35%程度上昇させ,世帯の貧困リスクを平均30%低減させる傾向にあった.ただし,多くの指標で低学歴層ほど正規雇用就労の効果が小さい傾向があることが明らかとなった. 第2の課題では,パネルデータの利点を生かし,2時点間(中学2年/高校2年)の世帯所得変動と子どもの進路意識・進学行動の関連について検討した.分析からは,同時点間で低所得・貧困状態への転落と脱出を経験した群は,貧困持続群に次いで子どもの教育期待と実際の大学進学率が低いことが見出された.この点は,国外の既存研究が指摘してきた貧困動態の効果の存在が日本の調査観察データでも支持されたことを示している. 他にも,離別リスクと社会階層の関連についてイベント・ヒストリー分析を行い,近年ほど親との離死別を経験する子どもが増加基調にあること,母親(妻)よりも父親(夫)の階層的地位がひとり親世帯の形成に大きく影響していることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は採択決定後半年という短い研究期間であったが,当初の予定通りデータセットの構築とその基礎的分析を遂行することができた.データセットの更新や文献収集も順調に進んでいることから,冒頭の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,構築した統計モデルを精緻化させ,その成果を学術雑誌等への投稿を中心に行う.当初予定していなかったが,他の公的統計データ(国勢調査・国民生活基礎調査など)への応用可能性を踏まえながら,引き続き既存データの計量的な実証分析を積み重ねていく.それに加え,参加している学術調査の実査が昨年度末に概ね完了したことから,その一次分析にも順次着手する.国外の研究動向や最新の家族パネルデータの統計モデルの修得/把握を目的として,国外学会への参加・国外データアーカイブセンター(GESISなど)が企画するワークショップへの参加(1週間程度)も視野に入れている.
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