2018 Fiscal Year Annual Research Report
Educational attitudes and distrust between college graduates and non-college graduates: Social trust theory approach
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18H05727
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大崎 裕子 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (10825897)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 大卒層と非大卒層の間の相互不信と分断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大卒層と非大卒層の間の対立や相互不信,およびそれらと教育意識の関連を明らかにすることを目的としている.2018年度は,2019年度に実施予定の本調査の予備調査として,「学歴間相互不信と教育意識の関係に関する調査」を行った.具体的には,様々な社会属性パターンをもつ他者に対する信頼およびそれらの他者との付き合いの有無,自身と学歴が同様または異なる他者への信頼と共感,子どもに希望する進路,教育に関する意識,領域別不公平感,学歴不平等感,対人的信頼等について尋ねるインターネット調査を実施し,全国の25-64歳男女計1800名から回答を得た. 収集したデータの基礎分析を行った結果,以下のことが明らかになった. 1)自分より低い学歴の人を信頼する人よりも,自分と同程度以上の学歴の人を信頼する人の方が多い.後者のように考える人は,非大卒層よりも大卒層に多い. 2)自分より低い学歴の人の意見が参考になると考える人よりも,自分と同程度以上の学歴の人の意見が参考になる・共感できると考える人が多い.後者のように考える人は,非大卒層よりも大卒層に多い. 3)一方,自分より低い学歴の人と話が合わないと感じる人よりも,自分より高学歴の人と話が合わないと感じる人が多い.後者のように考える人は,大卒層よりも非大卒層に多い. これらの結果から,確かに大卒層と非大卒層の人々の間に相互不信や分断が生じていることが明らかとなった.引き続きデータ構造の精査と質問項目の改訂をおこない,2019年度の本調査の設計,実施にむけて研究を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り,全国規模のインターネット調査を実施し,学歴間相互不信と学歴間分断,およびそれらと関連が予想される教育意識や不平等感等の項目の基本構造を検討するためのデータを,十分なサンプルサイズと調査設計のもとで収集することができた.収集したデータは2019年度に行う本調査の予備調査として,各項目の分布や項目間の関連を詳細に検討することで,本調査の精度向上に生かす予定である. また基礎的な分析の結果ではあるが,本研究において第一に想定している「学歴間の相互不信や分断」が確かに存在することを示す結果も得られた.この結果をもとに,次のステップとして,学歴間の相互不信と分断の原因および結果となり得る教育意識や不平等感との関連の分析を進めることが可能である. 2018年度は研究期間が半年と短期間であったことから年度内の学会等での成果発信には至らなかったが,次年度の計画を順調に遂行するための材料収集という主要目的は達成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,2018年度に収集した予備調査データを精査し,本調査にむけて項目を修正するとともに,背景理論や仮説の妥当性についても検討を加える.それらを踏まえて本調査を計画・実施し,データを収集する.収集したデータの基礎的・応用的な計量分析を行い,学歴間の相互不信・分断と教育意識等の関連・因果の構造について検証する. これらと並行して,2018年度予備調査データから学歴間の相互不信と分断の基本的構造について丁寧に分析を行い,学会等で成果を発信する.
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