2018 Fiscal Year Annual Research Report
キャリア教育充実へ向けた女性のキャリア形成とディーセント・ワーク概念の研究
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18H05772
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
福山 文子 専修大学, 経営学部, 講師 (30824130)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | キャリア教育 / ディーセント・ワーク / 女性のキャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多くの日本人女性が出産を機にキャリアを中断する事実を踏まえ、キャリア教育改善に向けて、ディーセント・ワーク(ILO【国際労働機関】が提唱している、「働きがいのある人間らしい仕事」)概念の、意義と可能性を検証し、示唆を得ることを目的とするものである。本年度は、以下の3点を中心に、ドイツ、日本の両国において調査を実施するとともに研究を行った。 ①一般文献およびジュネーブIOL本部から入手した文献等を通して、ディーセント・ワーク概念が女性のキャリア形成に資する意義と可能性について検討を行った。検討に用いた具体的な資料名は、「Work for a brighter future」「CARE WORK AND CARE JOBS」等である。 ②日本における、女性のキャリア形成をめぐる課題の一部を整理し、明らかにした。この課題の整理については、主として文献と半構造化インタビューをもとに行った。 ③5組と限定的ではあるが、ドイツにおいて当事者(出産でキャリアを中断しなかった女性、及び配偶者等)を対象とした予備調査を実施した。予備調査の実施においては、フランクフルト在住の調査協力者のネットワークによるところが大きい。国内の当事者に関しては、1組ではあるが、出産でキャリアを中断しなかった女性、及び配偶者に対する予備調査を行った。 なお、調査に際しては、事前に十分に主旨を説明し、必要に応じて現地調査協力者の立会いのもと、報告書への記載や学会発表 に活用することを承認する主旨の承諾書に署名を取るなど、研究倫理に配慮した。同時に、個人情報保護のための手続きやその後の公開可能情報の確認を得るための連絡方法も確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先ず、在スイスジュネーブILO本部における資料収集およびヒアリングは予定通り進んだものと考えている。理由はいくつか考えられるが、2点あげるとすれば、以下の通りである。 ①前広にILO駐日代表とコンタクトを取り、現地で対応して下さる方の情報を得たうえで、その方に対して、早めにヒアリングのアポイントを取りつつ、研究の概要や目的を伝えることができたこと。 ②現地で対応してくださった方が、大変忙しい中、関係する資料を丁寧に集めて、提示してくださったこと、である。 フランクフルトにおける質問紙調査、およびその回収も予定通り進んだものと考えている。以下に主な理由を挙げる。最も大きな理由は、現地で協力して下さる方と、質問紙作成段階から綿密な連絡を取り、配布、回収に至るまで途切れることなく、連携が取れたこと。加えて、調査協力者が本研究に対し深い理解と高い関心を示して下さったこと、さらには当該協力者が研究協力に関わり一貫して誠実な姿勢を示して下さったことである。 一点、日本における質問紙調査が予定より進まなかったことは課題として残った。理由としては、2019年2月から3月にかけて実施したドイツにおける予備調査の準備を優先したこと、およびこの予備調査準備に想定以上に時間がかかったことが挙げられる。しかしながら、この日本における質問紙調査実施の遅れに関しては、次年度において十分挽回可能であると思っている。既に調査協力候補者のリストは作成した。このリストを基に、計画的にかつ効率よく日本における質問紙調査は実施可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、研究テーマに関わる文献の検討、在スイスジュネーブILO本部における資料収集、さらにはドイツフランクフルトにおける質問紙調査の実施や日本における質問紙調査の実施等を行ってきた。 今後は、2019年9月に再度ドイツを訪問し、フランクフルトにおいて、前回と同じ研究協力者と連携をとりつつ(現在、協力を打診中)、質問紙調査を実施し論文執筆に必要な質と量のデータを得たいと考えている。また、このドイツにおける調査の際には、女性の権利に関わる資料館の視察や、ドイツにおける労働条件・労働環境を管轄する機関(労働省)での情報収集も行う予定である。同時に、並行して日本における質問紙調査も計画的に実施する。 また、上記のような調査の準備・計画(一部実施)を行いつつ、中間報告的な内容にとどまるが、所属する学会(公教育計画学会)において、「ディーセント・ワーク概念を基盤としたキャリア教育の充実」というタイトルで、2019年6月に口頭発表を行う(於 金沢大学)ことを予定している。 そして、9月の調査等で得られた新たなデータ、さらなる文献等の検討を行い、6月の学会における口頭発表を基盤とした論文を執筆したいと考えている。その後、執筆した論文をキャリア教育関係の学会へ投稿し掲載を目指すことで、研究成果を公開していきたいと思っている。 さらに将来的には、本研究で得られた知見を、実際の学校現場におけるキャリア教育に活かしていきたいと考えている。「女性のキャリア形成をめぐる課題」は、現代社会の喫緊の課題のひとつといえる。つまり、キャリア教育をめぐる、実際の文脈における課題と捉えることも可能である。現在、意欲的な実践者数人と具体的な授業構想について話し合いつつ、実践につなげるべく、検討を行っている段階である。
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Research Products
(1 results)