2018 Fiscal Year Annual Research Report
Cognitive mechanism of L2 readers' use of Implicit causality
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18H05774
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
細田 雅也 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (00825490)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 英語教育 / リーディング / 文処理 / 潜在的因果性 / 共参照処理 / 照応解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,英語学習者が動詞の「潜在的因果性 (implicit causality)」と呼ばれる性質を,共参照処理にどの程度利用しているのかを解明することである。例えば,Ken hurt Bob because he...という文のheはKenを (NP1バイアス),Ken respect Bob because he...という文のheはBobを指示するバイアス (NP2バイアス) がかかる。このように,動詞の潜在的因果性は,後にどの情報が続くかを制約する働きがある (潜在的因果性バイアス)。本研究は,このような潜在的因果性に対し,英語学習者がどの程度敏感かを検証している。 本年度は,学習者の潜在的因果性の利用に対する最初の検証として,オフライン課題時に潜在的因果性がどの程度利用されるかに対する実験を行った。具体的には,潜在的因果性を生起させる動詞を含む英文を材料として用い,接続詞以降の物語を完成させる「文完成課題」による検証を行った (e.g., Ken respected Bob because he...)。実験では,日本人大学生・大学院生が上記のような英文,および日本語文 (対照条件) を複数読み,文の続きを自由に作成した。作成された文の続きが,潜在的因果性バイアスとどの程度一致しているかを,言語 (日本語,英語),バイアス方向 (NP1, NP2) を観点として,統計的に分析した。 結果,英語と日本語の両条件で,学習者は潜在的因果性バイアスに従って文の続きを作っていたことが示唆された。一方,NP1バイアス動詞についてのみ,文の続きと潜在的因果性バイアスとが一致していた割合が,英語条件において日本語条件よりも有意に低かった。 以上の結果から,英語学習者は,学習言語 (英語) における潜在的因果性に敏感であるが,その度合は母語と比べると限定的であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語学習者の潜在的因果性の利用に関するオフライン実験を行い,その結果を公表できたため。 具体的には,実験結果を全国英語教育学会で発表し,オーディエンスから実験手法の妥当性,結果の解釈,今後の研究方針についての有益な助言を得ることができた。 さらに,全国英語教育学会紀要ARELE, 大学英語教育学会紀要JACET Journalに単著論文を採択させた。また,全国英語教育学会からは「学会賞(学術奨励賞)」を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,英文読解中の潜在的因果性の利用メカニズムについて検証を行う。具体的には,母語話者を対象とした先行研究にならい,潜在的因果性を生起させる動詞を含むターゲット文を中心とした物語文を作成する。そして,文の続きの代名詞が潜在的因果性バイアスと一致する (e.g., Ken respected Mary because she most of the time got a high score on the test.) もしくは一致しない (e.g., Mary respected Ken because she most of the time got a low score on the test.) 条件を作る。実験では,日本人大学生にこのような英文を一致,もしくは不一致条件で読解してもらう。そして,英文の読解時間を,一致条件と不一致条件とで統計的に比較し,読解中に潜在的因果性がどの程度利用されているのかを明らかにする。 得られた成果は,国内外の学会にて発表し,関連分野の研究者からフィードバックを得る。その後,英語論文として研究結果をまとめ,国際誌への採択を目指して投稿する。
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Research Products
(5 results)