2018 Fiscal Year Annual Research Report
教員研修の手法「Round Study」の効果の有効性についての検証と考察
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18H05777
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
原田 三朗 四天王寺大学, 教育学部, 准教授 (70824621)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | Round Study / 教師の学び / 校内研修 / 対話 / 協働の知 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は、主に、実際にRound Studyを行っている学校に出向き、データの収集とインタビューを行った。具体的には、これまで数年に渡ってRound Studyを行い、その研修のスタイルがすっかりと定着している東京都東村山市立青葉小学校の授業研究会へ2度、愛知県知多郡南知多町立日間賀中学校の授業研究会へ1度参加し、授業の様子、事後研究会における各テーブルの会話などのデータを収集した。 対象となったのは、青葉小学校では1年生の生活科、2年生の算数の授業であった。研修が常にこのような形で行われていることもあり、どちらの協議会でもたいへん活発な議論が交わされている様子がみられた。同校では、Final Round の進め方がアレンジされており、各グループの学びのまとめが代表者によって発表されたが、それぞれの発表に個性があり、生活科の授業を様々な角度から捉えている様子がみられた。2回目の算数の事後研究会では、研究会が終わっても、授業者と他の2名の若手教師が、授業についての議論を研修会場に残って続ける様子が見られた。 日間賀中学校では、1つの授業研究会でRound Studyによって導き出された課題を次の授業研究会につなげ、次はその課題について議論を進めるといった、連続性をもたせたRound Studyが行われていた。この学校では、テーブルに模造紙を置かず、各グループがホワイトボードを使って議論を進めている様子があった。職員数が少ないということを生かした方法である。 両校とも管理職も議論の中に入り、他の教員とともに熱心に議論を進めていたが、これは、Round Studyで大切にされている「フラットな関係性」の具現の姿である。たいへん興味深いデータを収集することのできた1年であった。尚、Round Studyの新たな展開として、この手法を大学の授業でも用いて、データを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2校にデータ収集に入ったが、研修にRound Studyが積極的に取り入れられており、両校とも学校の実態に応じて活用の仕方が工夫されていたことが研究の今後の展開や発展性の観点から重要な意味をもつ。展開の工夫や改良については、学校の実態に応じて変化させる必要があることを謳っているが、それぞれの学校が教師の学びについてどのように考えているのかが、その工夫に現れる。31年度の分析、あるいは、さらなるデータ収集によって、その工夫を切り口として、その学校が研修を通して育てようとしている教師の資質について明らかにしていくことができる。また、継続的な取り組みが進められているので、中期、長期にわたる教師の意識変化を捉えることができる。こうした点において、30年度の取組によってデータ収集が8割ほどできており、必要となる残りのデータが何であるのかが見えてきた。具体的には、この2校とは対照的に、初めて取り組む学校を分析の対象に加えることによって、継続的な取り組みの意義をさらに明確に示していくことが出来る。 もう一点、有意義であったことは、当初計画になかった地域連携の場面におけるRound Studyの活用と、大学の授業における活用といったRound Studyの可能性の広がりが見られたことである。地域連携の場におけるRound Studyでは、中学生、保護者、行政の方や地域ではたらく人などが熱心に会話を進める様子がみられた。本研究の主体は、授業の事後研究会であるが、Round Studyの展開の工夫という観点から、多くの示唆を得ることができる。同様に、大学の講義での活用は、学生の振り返りからどういった点でRound Studyが機能しているかを捉えることができ、31年度、事後研究会のデータの分析を進めるのに、ここからも多くの示唆を得ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
東村山市立青葉小学校については、調査の許諾を得ているので、31年度も2度ほど調査に入り、研究を継続する。30年度分のデータを整理し、時間的経過を軸にした数名の教師の教育観の変容について考察をし、さらに、31年度のデータを加えて変容を捉える。対象とする教師は、若手、中堅、熟年の三層に分ける。また、研究主任が長期に渡って記録を残しているので、経年の取組による教師の意識変化を同校の実践から読み取る。 同様に許諾を得て研究に入っている愛知県日間賀町立日間賀中学校における実践についても分析を進め、まとめる。同校は、島に1校という環境故、教師の人間関係は蜜である。島に渡った教師は、1週間生活を共にして過ごす。そうした中におけるRound Studyがそこに居る教師たちの教育観の変容へとどのようにつながっていくのかを30年度のデータ分析と31年度に行うインタビュー調査に基づき、明らかにする。 Round Studyは、提案されている方法をその学校の実情に応じて変化させていることも重要な要素として示している。青葉小学校については、Final Roundに工夫が凝らされており、各グループの学びの成果が明確に示されるような仕組みになっている。日間賀中学校では、Round Studyを次のRound Studyへとつなげ、学び取ったことを次に生かしていくことが大変重視されている。これらの特徴を整理し、それぞれの意義を明確にし、Round Studyの展開のバリエーションを広げ示していていくことも31年度の課題である。 31年度は教師教育学会、日本教育方法学会で報告し意見を求め、論文としてまとめていく予定である。また、すでに愛知の豊根中学校、福島大学の教員研修等での実施予定もあり、広がりを見せているので、作成してきたRound Studyの簡単な手引書リーフレットを改善したものを新たに作成する。
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Research Products
(2 results)