2019 Fiscal Year Annual Research Report
社交不安におけるコルチゾール反応の回復を促進する心理学的方略の効果検討
Project/Area Number |
19K20993
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 駿太 東北大学, 教育学研究科, 助教 (30823603)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コルチゾール / 社交不安 / セルフ・コンパッション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,自己を思いやる思考(セルフ・コンパッション方略)への従事が社交場面に対して生じるコルチゾール反応の回復に及ぼす影響について検討した。実験では70名の参加者に対して,他者からの評価を伴う心理的ストレス課題を実施した。そして,参加者を「他者が自身と同じネガティブな境遇におかれていたらどのように感じるか」「そのような他者を思いやるつもりで自分にどのような言葉かけができるか」などについて考える「セルフ・コンパッション条件」と,ストレス課題中の経験について単純に振り返りを行う「統制条件」に無作為に割り付け,コルチゾール反応の回復について比較した。このうち,年度内に40名分の唾液の成分解析が完了した。分析の経過報告として,コルチゾール反応の回復の程度に群間での有意な差は見受けられなかった。探索的な分析として,普段の社交場面についての回顧的思考(post-event processing;PEP)への従事しやすさの程度に応じた効果の検討を行った結果,普段PEPに従事しやすい者の場合,セルフ・コンパッション条件において統制条件よりもコルチゾール反応の回復がみられやすかった。このことは,セルフ・コンパッション方略によってPEPによるコルチゾール反応の持続が緩和される可能性を示唆していると考えられる。今後,取得したデータ全数の分析を実施し,再度当初の仮説の検証を行う必要がある。 研究期間全体を通じて実施した研究を総括すると,社交場面に対する回顧的思考によってコルチゾール反応の回復が阻害されている者においては,心理学的な方略によって回復を一定程度促進できる可能性が示唆された。ただし,社交不安の程度が顕著な者などにおいては回顧的な思考の操作そのものが困難であった可能性があるため,今後は本研究で用いた方略のさらなる改善が望ましいと考えられる。
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