2018 Fiscal Year Annual Research Report
他者の手の運動観察によって生じるくすぐったさ知覚機序の解明
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18H05802
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 五大 東北大学, 文学研究科, 助教 (70823772)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 体性感覚 / 触覚 / くすぐったさ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,身体近傍に呈示された他者の手の運動を観察したときにその視覚情報のみによって誘発される「くすぐったさ」知覚の生起機序を明らかにすることにある。通常,他者にくすぐられる場合に比べて,自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのは,順モデルに基づき自分自身の運動に由来する予測の感覚と実際の感覚の誤差が小さくなるためであると考えられている。そこで本研究では,視覚情報入力によるくすぐったさ知覚が触覚情報入力によるくすぐったさ知覚と共通の基盤を有する現象であるか否かを検討し,特にそのクロスモーダルな知覚を生起させるメカニズムの解明に取り組む。 本年度は,主に次の三点を心理物理学的な実験手法により確認した。(1)視覚誘導性のくすぐったさ強度は手の運動刺激が参加者の身体に近づくほど高くなること,(2)その視覚誘導性のくすぐったさ強度は,触覚刺激の呈示者が他者(実験者)でなく自己(実験参加者)の場合にくすぐったさが低減することを示した先行研究(たとえば,Blakemore et al., 1998)と同じように,他者の手の運動を観察する条件よりも自己の手を観察する条件で低下すること,(3)参加者の身体と手の運動刺激の間に透明な遮蔽物が設置された条件でも視覚誘導性のくすぐったさが生起することをそれぞれ確認した。これらの結果は,視覚誘導性のくすぐったさが単純な反応バイアスというよりも体性感覚的なものであることを示すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の一連の実験では,当初の予定通り,まず手の運動観察が触覚情報入力なしにくすぐったさを誘発し,その視覚誘導性のくすぐったさ強度が実験参加者の身体近傍に呈示された他者の手の運動を観察する条件よりも参加者自身の手の運動を観察する条件で低くなることを確認したため,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果を踏まえて,引き続き視覚誘導性のくすぐったさ知覚の生起メカニズムを検討する実験を行い,それらの成果を論文にまとめる予定である。
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