2020 Fiscal Year Research-status Report
性暴力被害者の被害実態の分析および性暴力被害者に特有な二次被害に関する調査
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19K21007
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
淺野 敬子 武蔵野大学, 人間科学部, 助教 (40823414)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性暴力被害 / 二次被害 / ワンストップ支援センター / PTSD / 性暴力被害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
被害者の支援ニーズに合わせた切れ目のない支援を行うためには、支援者および専門家は性暴力被害者の実態に即した介入を効果的に行うことが必要である。また、刑事司法や医療機関にかかわる機会が多い性暴力被害者に対しては、それらの専門家が二次被害を与えることなく介入を行うことが被害者の精神健康の回復において重要であると考えられる。 研究者はこれまで都内ワンストップ支援センターから紹介を受けた性暴力被害者のカルテ調査を行ってきた。これまでの調査により、支援センター経由で精神科を受診した性暴力被害者は、心的外傷後ストレス障害(以下、PTSD)および急性ストレス障害のり患率が高く、アルコール摂取時の被害、再被害が少なくないことや、被害後早期に精神科へつながるとPTSDからの回復が早まることが示唆された。令和2年度は性暴力被害者のカルテより情報を収集してデータについて分析を行った。分析対象者は70名(平均年齢26.8歳,SD 8.7)となり、分析結果について第19回日本トラウマティック・ストレス学会のシンポジウムで発表した。これまでの研究結果と同様に、性暴力被害時にアルコール摂取時の被害が全体の約3人に1人であり、再被害者が全体の約3人に1人を占めた。また、対象者のうち、トラウマに特化したCBT(認知行動療法)を導入した者(CBT導入群)は、CBT非導入分群に比べて初診時の年齢が高いことが示され、若年層へのCBT導入について検討が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性暴力被害者ではPTSDの有病率が高く、PTSD治療にはトラウマに焦点化した認知行動療法が欧米のPTSD治療ガイドラインで推奨されている。一方、ワンストップ支援センターを利用した性暴力被害者に対して、トラウマに焦点化した認知行動療法を適用した実情についての報告はほとんどない。 令和2年度は、ワンストップ支援センターからの紹介で精神科を受診した被害者の実情についてカルテ調査研究の結果を続報した。分析対象者のうち、トラウマに焦点化した認知行動療法(以下、CBT)を導入した者と導入しなかった者の特徴について検証し、性暴力被害者へCBTを適用する際の課題について検討を行うことができた。 一方、性暴力被害者に特有な二次被害に関する研究(インタビュー調査)は新型コロナウィルス感染拡大の影響により研究計画および実施が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年から行ってきた性暴力被害者の被害実態調査(カルテ調査)について論文化を進める。 性暴力被害者に特有な二次被害に関する研究(インタビュー調査)は、実施に向けて研究計画書を作成し、倫理審査の申請を行う予定である。新型コロナウィルスに感染拡大防止に配慮したインタビュー調査の実施よして、オンラインでのインタビュー実施について検討する。 本研究に関する最新の知見を得るため、学会および研修に参加するとともに、文献収集および文献レビューを今年度も継続して行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナウィルス感染拡大の影響で本務が多忙となり、また、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、インタビュー調査の研究計画に変更が必要となったためである。 令和③年度は、カルテ調査のデータ分析補助者のための人件費、学会・研修会等へ参加するための旅費交通費、書籍等の物品購入費等として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)