2019 Fiscal Year Research-status Report
社交不安症に対する注意に特化した治療プログラムの開発:自己注目の本質的役割の解明
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19K21009
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
富田 望 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (30823364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社交不安症 / 自己注目 / 注意バイアス / 視線追尾 / メタ認知療法 / メタ認知的信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、社交不安の維持要因である「自己注目」の生起を眼球運動から予測するための予備的検討として、スピーチ中の自己注目の程度と眼球運動との関連性を検討した。大学生34名を対象に、視線追跡装置を装着した上でスピーチ課題を実施し、スキャンパス(視線が泳ぐ程度)を測定した。また、質問紙を用いてスピーチ中における観察者視点の程度を測定した。その結果、両者の間には負の関連が示され、自己注目をするほどスキャンパスが短くなることが示唆された。以上より、スキャンパスが自己注目の効果を測定する指標として役立つ可能性が考えられた。 第2に、自己注目や注意バイアスを制御するメタ認知的信念(「人の反応を気にすることは役立つ」といった注意の方略)」に着目し、メタ認知的信念を低減させることで注意の偏りが修正され、社交不安症状が低減するのかを検討した。社交不安傾向を有する大学生22名を介入群と統制群に振り分けた。介入群には、スピーチ課題中の視線データを用いながら、注意の偏りとメタ認知的信念に関する心理教育を実施し、統制群には注意の偏りに関する簡易的な心理教育のみ実施した。効果指標としては、社交不安症状を測定する質問紙と、注意の偏りを測定する認知課題およびスピーチ課題時における視線の停留時間を用いた。その結果、介入群のみにおいて社交不安症状が有意に低減し、メタ認知的信念と社交不安症状の変化量同士の間には有意な正の相関が示された。一方で、介入前後における認知課題の成績およびスピーチ課題中の各聴衆への注視時間については有意差がなく、注意の偏り自体は介入前後において統計的変化を示さなかった。以上より、メタ認知的信念への介入は、注意の偏り自体への直接的な効果はないものの、社交不安症状を低減する上で有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来は臨床群を対象にした集団療法を実施する予定であったが、先行研究や昨年度の研究知見をふまえると、介入対象となる各変数と社交不安症状との関連性について、健常者を対象とした複数の基礎研究を実施する必要があると考えた。そこで、本年度は、健常者を対象にした研究を実施し、メタ認知的信念が介入ターゲットとして有効であることを示し、眼球運動が自己注目の客観的指標となり得るということを明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
眼球情報や脳血流といった個体側の生理的な情報から自己注目を予測する方法を開発するとともに、前年度および今年度の研究成果に基づいて、注意に特化した介入プログラムを完成させる。
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Causes of Carryover |
本研究の最終的な研究計画は、社交不安症患者を対象に集団での介入プログラムを実施し、その効果を検討することである。介入対象となる変数と社交不安症状との関連性や自己注目の測定法について、十分な検討がなされていない点があったため、本年度は健常者を対象にした研究を実施した。そのため、次年度において、本年度の研究成果に基づいてプログラムを完成させ、最終的な研究計画を遂行する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] Correlation among social anxiety, attentional biases toward angry faces, and metacognitive beliefs about focused attention.2021
Author(s)
Minamide, A., Tomita, N., Kai, K., Kumagai, M., & Kumano, H.
Organizer
The 32nd International Congress of Psychology
Int'l Joint Research
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[Presentation] The relation between social anxiety, attentional biases, and metacognitive beliefs.2019
Author(s)
Minamide, A., Tomita, N., Kai, K., Kumagai, M., & Kumano, H.
Organizer
The 11th International Health and Longevity Forum & Health Industry Expo and the Second Session of World Comprehensive Health Sports Meeting,
Int'l Joint Research
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