2018 Fiscal Year Annual Research Report
注意分割気晴らしによる注意視野の拡張および反すう緩和効果の検討
Project/Area Number |
18H05818
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 遥至 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (60822955)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 反すう / 気晴らし / 反応スタイル / 注意制御 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
質問紙調査により,不快な気分に対する適応的,不適応的な反応スタイル(不快な対象に関する思考を行う「考え込み反応」,不快な対象から注意を逸らし,他の対象に向ける「気そらし反応」),注意制御,抑うつ,自己没入の関連を検討した。調査対象は大学生・院生247名であった。 まず,反応スタイルから抑うつへの影響を注意制御スキルが媒介するというモデルを立て,媒介分析による検証を行った。その結果,考え込み反応と気そらし反応の適応的,不適応的な側面はいずれも,注意機能(選択的注意,分割的注意)を介して抑うつと関連することが示された。なかでも,分割的注意(注意を2つ以上の対象に同時に向ける能力)は全ての反応スタイルにおいて媒介効果を示した。 次に,自己について日常的に考え続ける傾向である自己没入と抑うつの関連を注意制御が調整するという仮説を立て,階層的重回帰分析による検証を行った。その結果,自己没入は抑うつと正の関連を示すものの,自己没入が高くとも分割的注意スキルが高ければ,抑うつが低く抑えられること,一方で自己没入が高く転換的注意スキル(注意をある対象から別の対象へ向け替える能力)も高ければ,抑うつが特に高まることが示された。 これらの結果は,自己の思考に注意が向きやすい人が抑うつ的な反すうから抜け出すためには「注意の分割」というスキルが重要であることを示唆する。これは本研究が今年度,実験によって検証する「注意分割気晴らし」の有効性を間接的に支持する知見である。従来,反すう思考への対処である気晴らしは,不快な思考から注意を逸らす(注意の転換)を強調するものであった。しかし,反すう傾向が高い人に対しては,不快な思考から注意を逸らすのではなく,そこに注意を向けながら気晴らしを行う(分割)ことが有効である可能性が示されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
18年度は調査に加えて実験を行う予定であったが,これを行うことができず,調査のみに終始してしまった。これは,並行して進めていた別の実験の遂行に時間がかかってしまったこと,新たに共同研究のメンバーとして他の研究計画にも参加していたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の6~7月から,予定していた実験を開始する。なお,当初の研究計画では別個の実験を2つ,順次行う予定であったが,計画を見直してこれらを組み合わせた1つの実験として遂行することを予定している。これにより,実験の諸手続きに要する期間を短縮することが可能である。この変更による採取データの大きな変更は生じない。 また,昨年度分までの研究成果は今年度の2つの学会において発表予定である。
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Research Products
(2 results)