2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H05834
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小池 貴之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (30784706)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | K3曲面 / 部分多様体 / レビ平坦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究課題の第一段階と言える、K3曲面の開部分多様体についての研究を主に行った。岡山大学の上原崇人氏との共同研究により、かねてからK3曲面の貼り合わせ構成(射影平面を適切な九点で爆発し、そこから適切な楕円曲線の近傍を取り除いた補集合Mと、同様にしかし別の九点配置から構成したものM'とが、正則に貼り合わせることでK3曲面となるという構成)についての研究を行ってきた。本研究ではその詳細、特に周期積分と呼ばれる量についての定量的研究をより詳細を行うことにより、我々の貼り合わせ構成で構成可能なK3曲面がK3モジュライの中でどのような大きさ及び位置を占めるのかを明らかにした。特にその大きさの部分について、射影平面の九点爆発内での適切な楕円曲線の近傍の大きさに関する量を用いた記述ができたことは、来年度以降の研究(特にカラビ・ヤウ多様体の開部分多様体とログ・カラビヤウ多様体の部分多様体近傍との関係)への展望に大きな影響を与えるであろうという観点から大きな研究成果と言える。 また、上記研究と並行して、特異的な楕円曲線の近傍とその中に存在するレビ平坦超曲面に関する研究も行った。上記研究では楕円曲線の近傍に関するArnoldの定理が基礎となっているが、今年度私が得た結果はその特異版と見做せるものであり、これによりより特殊な九点による射影平面の爆発に対して、着目すべき開部分多様体がその複素構造を込みで明確となった。 さらに上原氏との共同研究に於いては、その開部分多様体に於いて考えるべき特殊な座標函数を示唆する考察も明確となり始めており、初年度の研究実績はその計画通りに順調に挙げられていると認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項目でも述べた通り、本年度は本研究課題の第一段階と言える、K3曲面の開部分多様体についての研究を主に行った。これは先に述べた上原氏との共同研究に基づく独自の視点に基づけば、射影平面の九点爆発内における楕円曲線近傍、とくにArnoldの定理のより定量的理解に関するものであると説明ができる。その研究を周期写像の観点から詳細化でき、さらにArnoldの定理の特異版を得ることが出来たため、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に於いては、まず今年度に行った研究の高次元化が課題となると考えている。適切なログ・カラビヤウ多様体からその境界因子の近傍を取り除き、貼り合わせ構成を行うことでカラビヤウ多様体を構成する。また並行して、これまでの研究成果を活用することで境界因子が特異的である場合についての研究も行う。 今後の研究では、よりケーラー幾何学的な視点を取り入れることで、K3曲面やカラビヤウ多様体の上のリッチ平坦計量の、適切な開部分多様体上での詳細な記述・理解をも目指す。同時にそのような開部分多様体上でのレビ平坦超曲面の存在や複素平面のはめ込み像の存在問題を考察することで、本研究は十分な独自性を以て推進できると考えている。
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