2018 Fiscal Year Annual Research Report
中性子を用いたスピン流-熱電変換プロトタイプ物質のマグノン分散及び寿命の決定
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18H05841
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉川 貴史 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (60828846)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | スピンゼーベック効果 / スピン流 / マグノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スピンゼーベック効果(SSE)の発現を担う磁性体中のマグノン励起特性を中性子をプローブとして実験的に調べ、本現象をマグノン励起(分散関係・寿命)の観点から定量議論することである。得られた知見をスピンゼーベック効果・熱スピン流現象の理解に還元し、熱-スピン相関物性の学理体系の構築を目指す。 今年度の実績として、テルビウム鉄ガーネットTb3Fe5O12のスピンゼーベック効果測定を行い、信号の特異な二回の符号反転を低温域で観測したことが挙げられる。対照実験を通じて、この符号反転が従来の熱電効果(ネルンスト効果)では説明されないことを確かめた。本現象は、Tb3Fe5O12のマグノンブランチのスピン偏極(通常の強磁性マグノンとは逆のヘリシティをもったマグノンブランチ)とブランチ自身の温度依存性に関係していると考えられる。また、Tb3Fe5O12のスピンゼーベック効果の信号強度は、これまでスピンゼーベック効果が主に研究されてきたイットリウム鉄ガーネットY3Fe5O12(YIG)に比べて、1桁程度小さく、これはTb3Fe5O12のマグノンの低寿命性に関係していると考えられる。今後、Tb3Fe5O12の磁気構造解析及び、中性子散乱実験を通じて起源の解明に迫る。 また別な成果として、スピンゼーベック効果の逆効果であるスピンペルチェ効果(スピン流による熱流生成現象)の磁場依存性において、マグノンとフォノンの分散関係の相対位置に関係した異常なピーク構造を観測したことが挙げられる。これは研究代表者らが過去にスピンゼーベック効果で観測した現象の逆効果と考えられ、スピンペルチェ効果の観点からも、マグノン分散関係と熱スピン流現象の解明に向けた進展が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究により、マグノン励起特性とスピンゼーベック効果の関係性を定量議論するための土台となる磁性体試料系の開拓ができ、研究を軌道に乗せることができた。今後は中性子散乱の結果と合わせて、論文執筆などを予定している。以上より、研究がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はマグノン系にとどまらず、他の磁気励起(スピノンなど)と熱スピン流現象の関係解明も視野に入れて、研究を展開する。
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[Journal Article] Interface-induced anomalous Nernst effect in Fe3O4/Pt-based heterostructures2019
Author(s)
R. Ramos, T. Kikkawa, A. Anadon, I. Lucas, T. Niizeki, K. Uchida, P. A. Algarabel, L. Morellon, M. H. Aguirre, M. R. Ibarra, and E. Saitoh,
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Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 114
Pages: 113902~113902
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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