2018 Fiscal Year Annual Research Report
噴火の爆発性を支配するナノ結晶の核形成・成長メカニズムの解明
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18H05866
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
無盡 真弓 東北大学, 理学研究科, 助教 (60822004)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ナノライト / ナノ結晶 / 火山噴火 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグマが急冷した火山ガラス部分に無数のナノ結晶が存在していることを発見した。これは、爆発・破砕の直前に、マグマの粘性がナノ結晶の晶出によって劇的に上昇し、それが火山の噴火様式を支配していた可能性を強く示唆する。このような結晶作用が起こる条件を決定するため、結晶の核形成・成長のその場観察実験を、本分野において世界唯一である加熱ステージを備えた高分解能電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて行った。2018年度はまず試料の準備方法の確立を行った。3つの方法(乳鉢で粉砕する方法、約10μmの厚さに両面研磨し機械的に破断する方法、集束イオンビーム(FIB)を用いて加工する方法)により試料の準備を行い、試料の加工方法による核形成・成長機構の違いを比較、検討した。その後、最適な準備方法で、温度・酸素雰囲気・真空度の条件を系統的に変えた実験を行い、結晶の核形成・成長が観察できる条件を探った。その結果、数密度の高いナノ結晶の結晶化および個々の分子やイオンが付着していく古典的な核形成経路による成長のその場観察に成功した。結晶化の実験条件と結晶作用の速度を制約できたことは、噴火様式の推移の条件、時間スケールを理解する上で重要な成果である。さらに、近年提唱されている非古典的な核形成経路の一つであるOriented Attachmentによる合体成長をとらえることができた。これは高真空環境下において観察され、天然の火山噴出物とは異なる鉱物によるものであったが、これまでこの核形成経路が報告されているナノ結晶よりもはるかに大きい粒子で観察された。合体による成長がナノ粒子に限らず生じている可能性を示唆し、結晶の成長メカニズムを理解する上で重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度・酸素雰囲気・真空度の条件を系統的に変えた実験を行うことで、数密度の高いナノ結晶の結晶化、個々の分子やイオンが付着していく古典的な核形成経路、さらにOriented Attachmentによる合体成長のその場観察に成功するという成果を2018年度中に得られたので順調に進んでいる。しかし、FE-SEM内で加熱ステージのケーブルが切れるというアクシデントがおき、そのケーブルの納期に2か月要してしまったこと、相同定に関してほとんど全ての実験産物に対して集束イオンビーム(FIB)で加工し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて分析する必要が出てきたため(これら一連の作業には時間を要する)、想定以上に実験から解析までに時間がかかってしまった。一方で、この作業を行うことでFE-SEMでは得られない実験産物の断面の情報が得られ、実験結果の理解が進んだ。酸素雰囲気や温度を変えることで、天然の鉱物組み合わせに近いものは再現できているが、輝石という鉱物種の析出が唯一できておらず、今後はその条件を探る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず、FE-SEM環境下でより天然の火山の環境下を模擬するために、これまでの実験とは異なる酸素雰囲気と温度で実験を行い、輝石が晶出する条件を探る。そして、昨年度に行った実験結果と合わせて、鉱物種ごとに、どの温度・酸素雰囲気・時間条件で、どのような核形成・成長経路で結晶化をするのか、またそのときの核形成速度・成長速度・核形成待ち時間をまとめる。その速度を利用して、天然の噴出物と比較し、噴火様式の分岐が火道浅部で起こるときのマグマの上昇速度を明らかにする。
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Research Products
(2 results)