2018 Fiscal Year Annual Research Report
超高温高圧その場物性精密測定から導き出す最下部マントルの地震波異常の原因
Project/Area Number |
18H05867
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増野 いづみ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (50822102)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 下部マントル / 外熱式 / ダイヤモンドアンビルセル / 高温高圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験における高温発生方法は、主にレーザー加熱式と外熱式加熱に分けられる。外熱式の加熱方法を用いることで試料中の温度勾配が少なくすることができるが、技術的な困難さにより、現在まで下部マントル上部の温度圧力条件での測定にとどまっていた。本研究では真空チャンバーおよびグラファイトをヒーターに用いるなど、セル構成を工夫することにより、実際の地球マントル全領域を網羅するような条件まで発生温度圧力を拡張し、X線回折法や分光法と組み合わせ、マントル物質の物性を明らかにすることを目的としている。 初年度である今年度は、真空チャンバーおよびグラファイトヒーターを導入した外熱式ダイヤモンドアンビル超高温高圧発生装置の開発に着手し、実際に放射光X線回折法やラマン分光法と組み合わせて高温高圧実験を行うことができた。放射光X線回折は兵庫県にあるSPring-8にて、ラマン分光測定は東京大学にて実験を行った。外熱式加熱には比較的低温下(1000K以下)の実験ではプラチナ・タングステン・モリブデン等の金属ワイヤーを使用した円柱状ヒーターを用い、高温下(1000K以上)の実験ではグラファイトヒーターと真空チャンバーを用い、H2O・Mg(OH)2・ブリッジマナイトの高温高圧その場X線回折データおよびラマンスペクトルの取得を試みた。H2Oにおいては、地球の下部マントル温度圧力条件である~1500K, 65万気圧までX線回折データの取得に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究達成度に関して、採択通知時期や予算の使用が可能な期間がおおよそ半年という条件を考慮すれば、おおむね順調に進展したと考えられる。今年度は外熱式加熱で用いる真空チャンバーの構想を練り、実際に購入して実験を行った。特に、開発している外熱式ダイヤモンドアンビルセルと真空チャンバーを用いて、放射光施設などで当初の目標である下部マントル温度圧力を発生させ、X線回折データやスペクトルデータを取得できたことは大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は発生圧力を調整しながら実験を行うために、ガス圧駆動式メンブレンセルを真空チャンバーに組み込む予定である。また、より高温高圧を発生させるためには、アンビルに用いているダイヤモンドのグラファイト化を防ぐ必要がある。ダイヤモンドのグラファイト化を防ぐには水素ガスがチャンバー内に存在する必要がある。現在は真空を引く前に、不活性ガスであるアルゴン99%水素1%のガスをチャンバー内に充満させているが、このアルゴン:水素比を調整して実験を行っていく必要がある。現在アルゴン95%水素5%ガスでの実験準備を行っている最中である。加えて、真空チャンバーの窓材としてSiO2ガラスを用いているが、この窓がX線回折データやスペクトルデータのバックグラウンドを上げており、試料由来のピークが一部埋もれてしまっている。今後は他の窓材の使用や窓の厚みの検討を行っていく予定である。
|