2018 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯・中緯度海上の降水特性を決める大規模環境場要因に関する観測的研究
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18H05869
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 千恵 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (80649236)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 降水特性 / 豪雨 / GPM衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、熱帯・中緯度海上の降水特性を大規模環境場と結び付け、大規模環境場から降水特性を推定するための科学的知見を得ることである。2018年度は、①初夏における日本付近の大規模環境場の調査、②2018年7月豪雨の解析、③全球海上の降水特性と大規模環境場との関係の解析を行った。研究成果は適宜、学会等で発表された。 ①では、海面水温及び対流圏中層の大規模鉛直風を大規模環境場の指標とし、それらと大気の成層不安定度や湿度との関係を調査した。また、第5次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP5)のマルチ気候モデルデータを用いて将来変化を調べ、現在における降水特性と大規模環境場との関係が将来もある程度維持されるという示唆を得た。 ②では、2018年7月5-8日にかけて西日本の広域に豪雨をもたらした降水システムの特性及び大規模環境場を調べた。特に、朝鮮半島付近に停滞した対流圏上層トラフに着目し、トラフが2018年7月豪雨に果たした役割を明らかにした。さらに、西日本において豪雨をもたらした状況と他の領域の状況とを比較し、組織化した降水に好都合な大規模環境場を議論した。 ③では、これまでに得られた知見をもとに、全球降水観測(GPM)主衛星搭載降水レーダ観測データを解析し、全球海上の降水をその特性によりタイプ分類し、それらと海面水温及び大規模鉛直風との関係を調べた。大規模環境場との関係はタイプごとに異なり、全球海上の降水特性がいくつかの大規模環境場の指標によってある程度分離できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、GPM主衛星搭載降水レーダ観測データをもとに雨域データベースを作成し、全球海上における雨域の特性とその大規模環境場に関する全球平均的な解析を実施した。また、初夏の日本付近における大規模環境場の詳細な解析を通して、大規模環境場の指標の選定や、現在及び将来における降水特性-大規模環境場関係に関して議論した。一方、2018年7月豪雨の解析は当初の研究計画にはなかったが、組織化した降水システムによって豪雨がもたらされた事例であり、その大規模環境場の調査は本研究課題と非常に関連すると考え実施した。以上の研究は、本研究課題の目的である降水特性と大規模環境場の関係に関する理解を促進させた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、全球海上において、異なる特性を持つ雨域がいくつかの大規模環境場の指標によって互いに分離されうることが示された。そこで今後は、引き続き全球海上の雨域特性の解析及び雨域と大規模環境場との関係の解析を行うと共に、当初の研究計画通り、その関係性を定量化し、定量化した関係をもとに雨域特性の時空間的分布を再構築する。さらに、再構築された雨域特性分布を詳細に解析する。
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Research Products
(6 results)