2019 Fiscal Year Annual Research Report
Formation and evolution of UFDs in cosmological zoom-in simulations
Project/Area Number |
19K21057
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平居 悠 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60824232)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 矮小銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / 化学進化 / 元素合成 / 連星中性子星合体 / 電子捕獲型超新星爆発 / rプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
天の川銀河やその周囲に存在する矮小銀河での高分散分光観測が進んでいる。これらの観測により、太陽の100分の1以下の金属量の星では、ストロンチウムやイットリウムといった中性子捕獲元素量と鉄やバリウム量との比にばらつきがあることが示されている。また、最近のサーベイ観測により、数多く発見されている非常に暗い矮小銀河 (UFD)においては、一部の銀河を除いて中性子捕獲元素と鉄の比が天の川銀河より低いことが知られている。これまでの元素合成計算により、電子捕獲型超新星爆発、連星中性子星合体、回転大質量星、漸近巨星分枝星などが中性子捕獲元素の起源天体の候補として挙げられている。しかし、これらの起源天体が矮小銀河においてどのように寄与しているのか明らかではなかった。 本研究では、中性子捕獲元素の代表例としてストロンチウムに着目し、矮小銀河でのストロンチウムの汚染史をシミュレーションした。本年度は、昨年度実装した電子捕獲型超新星爆発、連星中性子星合体モデルに加え、回転大質量星、漸近巨星分枝星のモデルを導入した。その結果、大質量星由来で寿命の短い電子捕獲型超新星爆発や回転大質量星は、矮小銀河進化初期からストロンチウム放出に寄与を始め、金属量が太陽の1000分の1以下でストロンチウムを持つ星の多くは、これらの天体の放出物から形成されていることが明らかになった。電子捕獲型超新星爆発と回転大質量星から主にストロンチウムが放出されると仮定したシミュレーションを行ったところ、ストロンチウム/鉄比の分散が、回転大質量星を仮定した場合の方が小さくなった。一方、漸近巨星分枝星は、これらより寿命が長い星由来であるため、金属量が太陽の10分の1程度になってから寄与を始めた。以上のように本研究では、ストロンチウムの起源天体を制限した。今後このような重元素を銀河進化史の指標とすることができるようになると期待できる。
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