2018 Fiscal Year Annual Research Report
時空間マルチスケール解析理論による温度・変形場のミクロ・マクロ非定常性の連関
Project/Area Number |
18H05881
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松原 成志朗 東北大学, 工学研究科, 助教 (40823638)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 増分ポテンシャル法 / 一般化収束論 / 拡張Hill-Mandel原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の主題である時空間マルチスケール解析理論,および関連する数値計算手法の構築に向けて,これまで取り組んできた増分ポテンシャル法の枠組みで非均質体に対する熱・機械強連成増分エネルギー汎関数を定義し,これに数学的均質化理論において標準の一般化収束論の帰結を適用することで,ミクロ構造内における熱・機械連成現象の非定常性を考慮可能な新規のマルチスケール解析理論を提案した.具体的には,ミクロ構造内におけるこれらの非定常性がエントロピー速度や内部変数速度によって表現され,非均質体に対する熱・機械強連成増分エネルギー汎関数の停留条件に一般化収束論を適用して2変数境界値問題が定式化されることから,数学的均質化理論に厳密である.したがって,当該研究で目標とする時空間マルチスケール解析理論の基盤理論となりうることが期待され,本成果は,すでに日本機械学会第31回計算力学講演会にて発表済みである. しかし,本理論は均質化理論的な厳密性を重視しすぎており,ミクロ・マクロ両スケールの増分エネルギー汎関数を独立に定義することができない.そこで,前述の理論で得られた支配方程式をベースとして,理論的な制約を弱めるために数学的均質化理論で一般的なHill-Mandel原理を陽に活用することで,ミクロ構造内における現象の非定常性を十分に考慮可能で,かつ上述の変分的整合性を担保する2変数境界値問題を定式化することに成功した.さらに,本アプローチを展開することで,ミクロ現象の進展速度に対するミクロ構造の寸法依存性の考慮や両スケールの時間分離の実現が原理的には可能であり,実用的な数値計算手法への開発に繋げることが期待される.なお,本成果は第24回計算工学講演会およびCOMPLAS2019にて発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,時空間マルチスケール解析理論を完成する予定であったが,その基盤となる空間分離のみを考慮した熱・機械連成マルチスケール解析理論の開発にて,多くの問題が浮かび上がり,これらを克服するために多くの時間を要したため,研究の進捗に多少の遅れをとっている.具体的には,空間分離のみのマルチスケール理論においても,ユニットセル寸法を無限小とする均質化理論とミクロ現象の速度の取り扱いの間で理論的乖離が大きく,ミクロ構造寸法依存性の考慮や変分的整合性を担保した2変数境界値問題の定式化の実現には,理論的制約をある程度弱めるための追加的な処置が必要となったことが原因である. しかし,研究実績でも言及したように,Hill-Mandel原理を用いたアプローチにより,ミクロ現象の進展速度に対するミクロ構造の寸法依存性の考慮や両スケールの時間分離の実現が原理的には可能であり,その意味ではある程度の進捗を出せていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果として,一般化収束論の帰結の適用にて得られた支配方程式をベースとしてHill-Mandel原理を陽に活用することで,ミクロ構造内における現象の非定常性を十分に考慮可能で,かつ上述の変分的整合性を担保する2変数境界値問題を定式化することに成功している.したがって,まず本アプローチをベースとして高次の均質化理論を応用し,ミクロ現象の進展速度に対するミクロ構造の寸法依存性が考慮可能な理論を構築する.その後,両スケールにおけるエネルギー速度汎関数の時間積分に着目し,これを均質化理論に基づいて時間のスケール分離をすることで,時空間マルチスケール解析理論を完成させる. 一方で,今年度はデータ駆動型解析によるマルチスケール解析手法の高精度化にも着手しており,複数ケースのミクロ熱・機械連成解析によって得られる仮想的な実験データを用いたデータ駆動型マクロ構成則を自動的に構築可能な手法を構築することで,当該研究のもう一つの課題である分離型時空間マルチスケール解析手法を完成させる.
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Research Products
(1 results)