2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H05896
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柏木 誠 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (70825421)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 熱伝導率計測 / ナノ・マイクロスケール熱物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請した研究計画に従い、本年度は、貼付型熱伝導率計測デバイスの作製とそれを用いた熱伝導率計測可能性の探索をおこなった。デバイスの作製手法としては、真空蒸着を基本とし、パターニングの手法としてフォトリソグラフィとメタルマスクを用いた手法についてそれぞれ検討した。また、デバイスの基板となる高分子極薄膜としては、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマ(SBSナノシート)をポリエチレンテレフタレート(PET)上に成膜したものを用いた。真空蒸着時の蒸着ボート-基板間距離および蒸着レートを調整することで、高分子極薄膜基板へのダメージを抑制しながら、金属蒸着することに成功した。その結果、フォトリソグラフィおよびメタルマスクの両手法で、3ω測定用の金属細線パターンの形成に成功した。また、金属細線パターンを形成したSBSナノシートをPET基板上から剥離した結果、断線等が生じることなく、抵抗値の変化もほとんど生じないことが確認できた。このように、貼付型熱伝導率計測デバイスを作製することに成功した。作製した貼付型熱伝導率計測デバイスを用いて、SiO2薄膜の熱伝導率計測を試みた結果、文献値に近い値を得ることができた。つまり、本提案の熱伝導率計測デバイスを用いた計測可能性を示すことができた。この成果については、2018年10月に開催された第9回マイクロ・ナノ工学シンポジウムにおいて発表した。一方で、今回得られた計測結果は文献値と比較して、若干低い値となっていた。これはSBSナノシートとサンプル間の密着性が主な原因であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、概ね当初の計画どおり、貼付型熱伝導率計測デバイスの作製とそれによる熱伝導率計測の可能性について検討できており、その結果として、本研究で提案する熱伝導率計測デバイスがナノ・マイクロスケールの薄膜の熱物性が計測可能であることを示すことに成功している。一方で、計測できた熱伝導率については、若干過小評価してしまっているという問題点が明らかとなった。この要因はデバイス貼付時のナノシート-サンプル間の密着性によるものであると考えられるが、それがどの程度計測精度に影響するかについては検討が未だ不十分である。これらを踏まえて、現状の進捗は”おおむね順調にし転々している。”と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進展により、本研究で提案する貼付型熱伝導率計測デバイスによる熱伝導率計測の可能性と問題点が明らかとなった。これらを踏まえ、2年目はさまざまな薄膜系サンプルの熱伝導率を、本提案デバイスで計測することで、熱伝導率を過小評価する原因を明らかとするとともに、本提案デバイスの熱伝導率計測精度の検討および向上を図る。また、これらの検討に加えて、層状構造材料など、熱伝導率の異方性が高い材料について熱伝導率およびその異方性の計測・評価を試みることで、本提案デバイスの可能性を探索する。
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