2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Space Propulsion with a Low Toxicity ADN-Based Monopropellant
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18H05900
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
和田 明哲 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (40824991)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 放電プラズマ / イオン液体 / アンモニウムジニトラミド系推進剤 / 点火 / 着火 / 燃焼 / 宇宙推進機 / 小型衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人工衛星および探査機等の小型宇宙機の姿勢制御用スラスタの更なる高性能化と運用性向上の実現に向け、低毒性アンモニウムジニトラミド(ADN)系イオン液体推進剤を使用したプラズマ宇宙推進機の研究開発に取り組んでいる。 本年度は、ADN系イオン液体推進剤の点火および保炎が可能な機構の確立を目指し、放電プラズマによるイオン液体の点火特性および電気的特性を取得することを目的とし研究を実施した。下記に本年度の研究成果を示す。 (1)減圧環境下およびアルゴンガスパージ下において、ADN系イオン液体のオープンカップ(液体を静止させた状態で)試験を実施した。その結果、大気圧下において、反応機構容器の下流部より白煙および火炎の生成が確認でき、イオン液体の直接的な絶縁破壊および点火が確認された。また、反応機構内部では、瞬間的な圧力上昇が計測でき、イオン液体の電熱分解が可能であることを明らかになった。減圧環境下においても同様にイオン液体に対し絶縁破壊を起こし、分解ガスを種としたプラズマ発光が確認でき、イオン液体の電気的特性(絶縁破壊電圧および放電維持条件)および点火条件を取得した。 (2)本イオン液体は、溶媒に水やアルコール類を合成せず、固体物質同士を共融させ液化しているため、高粘性である。そのため、燃焼室内に50mg/s~500mg/sの流量で供給可能な機構の選定とその供給方法の妥当性を解析的に検証した。 現在は、(1)、(2)の結果を踏まえ、選定した液体推進剤の供給機構と反応機構を組合せ、燃焼特性の解析およびスラスタ燃焼試験による実験的な評価に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、放電プラズマによりADN系イオン液体に対し絶縁破壊を起こし、分解ガスを種としたプラズマ発光が確認でき、イオン液体の電気的特性(絶縁破壊電圧および放電維持条件)および点火条件を実験的に取得した。また、高粘性液体の供給機構の選定とその供給方法の妥当性を解析的に検証した。現在までの成果を考慮すると、おおむね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の2項について研究を実施する。 1.反応機構と液体供給機構の組合せ点火試験: 初年度で取得した電気的特性および点火条件などのデータを基に点火試験を実施する。液滴状態と放電挙動の関係を検証し、点火メカニズムの推定を行うと同時に、持続的な保炎が可能な条件の把握を行う。 2.スラスタ燃焼試験:上記の点火試験結果を踏まえ、燃焼室形状の設計指針を得るため、エネルギ投入量や燃焼室圧力などの各因子による燃焼特性への影響を評価する。燃焼特性は、燃焼室特性長さ、エネルギ投入量による反応性への影響を評価し、物性予測・測定およびスペクトル解析を実施する。また、同時に推進性能の評価のため、スラストスタンドによる直接的な推力計測、圧力、温度、流量などの計測を行う。以上により、ADN系イオン液体推進剤を用いたプラズマ宇宙推進機の設計指針および実現可能性を示す。
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