2018 Fiscal Year Annual Research Report
Orbital Dynamics in Strongly Perturbed Environments around Asteroids
Project/Area Number |
18H05901
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
菊地 翔太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (90830068)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 探査機 / 軌道設計 / 小惑星 / 摂動 / 太陽光圧 / 重力場 |
Outline of Annual Research Achievements |
小惑星の重力は小さくまた重力場が歪であるため,小惑星近傍では力学的に外乱の強い環境(強摂動環境)が形成され,探査機の軌道運動は強く乱される.本研究では,強摂動環境下でも燃料消費が少なくかつ自由度の高い安定な小惑星周回軌道として,1周に1回少量の速度変化を与えることで,人工的に周期性を持たせるRTO (Retrograde Teardrop Orbit) という周回軌道を考案・提案した.RTOの設計手法と基礎理論を構築し,RTO軌道群を求めることで,所要燃料や周期,安定性などの軌道力学的性質を体系的に理解することができた.さらに,RTOの実ミッションへの応用例として,はやぶさ2の小惑星リュウグウ周回運用の成立性を検討した.研究を進めることで,はやぶさ2とリュウグウの系に適用可能な安定なRTOが存在することを明らかにした.さらに,構築した力学理論を応用して,太陽光圧と重力場による軌道の乱れをラグランジュの惑星方程式を用いて解析的に表現することで,燃料を使わずに長期間安定となる凍結軌道の条件を見出した.加えて,この解析的に表した軌道運動と,オイラー方程式で記述した探査機の姿勢運動とを合わせることで,小惑星近傍での探査機の軌道運動と・姿勢運動を同時に扱えるように,理論を拡張した.その結果,軌道運動・姿勢運動の両方が自然に長期間安定となる条件を解析的に導出することに成功した.導出した解析解を数値積分して,有限要素リアプノフ指数と呼ばれるスカラー量を計算することで,探査機運動の安定性を定量的に評価する手法を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究として計画していた通り,RTOの基礎理論を構築することができた.具体的には,小惑星近傍での探査機軌道の定式化を行い,数値積分のイタレーションをすることで,RTOを設計する手法を確立した.さらに,初期条件を変えてRTO軌道群を求めることで,所要燃料や周期,安定性などの性質の変化を網羅的に探索することができた.実運用を見据えて,現実に生じる種々の誤差によるずれを軌道修正するための,RTO特有の制御則を合わせて考案した.また,これらの計画していた研究に留まらず,RTOの力学理論を応用することで,燃料を使わずに小惑星近傍に留まることができる凍結軌道の条件や,姿勢運動も考慮した長期安定の運動解を導出することに成功した.以上より,当初の計画以上の進展があったと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
RTOを実際に「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ周回に応用するために,実ミッションに即したより具体的な軌道設計を行う.具体的には,実運用では,探査機の発電や,地球との通信,および小惑星の観測,といった種々の要求を満たす柔軟な軌道設計が求められる.そこで,これまでに構築したRTOの軌道設計手法を用いて,実際のはやぶさ2ミッションにおける制約を定量化することで,これらの制約を満たすRTOを設計する.また,設計したRTOに対して,現実に生じ得る制御誤差や観測誤差,ダイナミクス誤差などを考慮した数値シミュレーションを行う.このシミュレーションの結果を検証することで,はやぶさ2のRTOを用いたリュウグウ周回運用の成立性を評価する.さらに,このRTOを実用化できた場合は,実際の運用実績を事後評価することで,軌道設計の妥当性をフライトデータから再検証する.
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