2019 Fiscal Year Research-status Report
緊急事態におけるヒューマンエラーへの対処法-そのメカニズム解明と簡便手法の開発-
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19K21088
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 真由子 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (70823764)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 呼吸再訓練法 / 認知行動療法 / 緊急事態 / ヒューマンエラー |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究では,申請者の開発した呼吸再訓練法と呼ばれる特別な呼吸法を事前に実施すると,緊急事態時であっても,ある程度迅速かつ落ち着いて行動できることが明らかとなった。今回は,そのメカニズム解明のため,我々の先行研究と同様の実験を実施し,呼吸法実施前から実験課題終了後までの生理指標を測定した。具体的な実験内容は以下の通りであった。 実験参加者は20代から35歳までの男性60名であり,呼吸再訓練法を課題前に実施する呼吸法群・簡単な課題を事前実施する無関連課題実施群・事前になにも実施しない統制群の3群であった。参加者には,先行研究で用いた水道管課題を全参加者に課した。この課題は,マウスクリックにより複雑な水道管のスイッチの配置を変え,目標(水流を通して、赤電球のみを消灯すること)を達成する課題であった。更に,環境条件も設定し,緊急事態条件・タイムプレッシャー条件・統制条件の3つの環境を設定し,同じく全参加者に課した。行動指標は,課題の総クリック回数,所要時間やエラー回数等と,副交感神経指標となるHF,交感神経指標となるLF/HF等を指標とした。 以上の実験結果から,呼吸再訓練法を事前実施してから実験課題に取り組むと,リラックス指標である副交感神経(HF)活動がより高くなると同時に,緊張指標である交感神経活動(LF/HF)もより高くなることがわかった。実験課題のパフォーマンスは呼吸再訓練法の事前実施により改善していることから,呼吸法実施によって,リラックスしつつも適度な集中ができているために,緊急事態時であってもある程度迅速かつ落ち着いて行動できるようになったと考えられる。これは,呼吸法を実施すると,全体の自律神経活動指標(TP)も大きくなっていることからも裏付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現場連携による研究を実施しているが,現場へのヒアリング結果から,当初予定していたよりも実験プログラムの設定をより詳細に組み立てる必要が生じた。そのため,実験プログラムの作成に時間がかかっている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,実験プログラムの改修・修繕を行いつつ,更に,呼吸再訓練法によるパフォーマンス改善メカニズムを探る。今回は,生理指標分析によって検討したが,今後は質問紙を用いた主観評価によってそのメカニズム解明を目指す。 また,本研究の最終目的は,現場でも用いることができる対処法開発である。そのため,今後も現場との連携により,詳細なヒアリング・打ち合わせを実施し,現場の様々な環境下でも耐えうる簡便な対処法開発に役立てることとする。
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Causes of Carryover |
実験実施にあたり、翌年度の助成金と次年度使用額を合わせた金額を、実験プログラム改修にあてるため。
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Research Products
(2 results)