2019 Fiscal Year Research-status Report
社会主義時代の大規模住宅団地のオープンスペース活用の変遷にみる地域継承性の研究
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19K21095
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 由乃 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (20825260)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 屋外空間 / オープンスペース / 再生 / 住民参加 / 区行政 / 社会主義 / プラハ / 造形芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、チェコ共和国プラハ市プラハ11区にある大規模集合住宅団地イジュニームニェスト内のオープンスペースにおける、設計計画の変遷と民主化後の再生施策について、資料分析、現地観察調査、地域関係者インタビュー調査を用いて明らかにした。その結果、一度に広範囲が計画された社会主義体制下の開発計画と比べると、現在の再生施策は、より周辺環境や関係主体に左右される局地的開発であること、その中で区行政主体で積極的な住民参加型の取組がおこなわれており、今後の屋外空間再生に関わる主体としての役割が期待されることを明らかにした。 本年度はプラハでの現地調査1回、国際会議での口頭発表1回、国内学会口頭発表1回、査読論文1本の執筆を行った。 現地調査は2019年11月にプラハ11区イジュニームニェストを訪れ、社会主義時代に屋外空間に設置された造形芸術作品の現存状況を現地踏査によって把握した。この調査結果については、造形芸術作品の設置の経緯に関する文献調査の結果と併せて、現在論文にまとめている。 国際会議は、2019年6月にプラハで開催されたWMCAUS2019に参加し、「Continuity and Transformation of Open Spaces in the Large Housing Estate Developed under Socialism in Prague, Czech Republic」のタイトルで口頭発表を行った。 国内学会発表は、2019年12月の第15回景観・デザイン研究発表会において、「プラハの大規模集合住宅団地イジュニームニェストにおける公共空間の造形芸術作品の現存状況に関する研究」のタイトルで口頭発表を行った。 査読論文は、イジュニームニェストのオープンスペース再生に関する現在の行政施策に関する論文を執筆し、2020年度中の掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、オープンスペースの物理的変化、運営主体、使用実態の把握について、資料分析、現地観察調査、地域関係者インタビュー調査を用いて明らかにすることとしていた。しかし、実際に調査を進めていく中で、社会主義時代の屋外空間設計計画についての資料が予想よりも豊富に見つかったこと、現在の屋外空間の再生事例が限られていたことから、調査の内容を現状把握に重点を置いたものから、社会主義時代の計画と現状の二つに分けて状況整理を行うものとした。 以上の理由から調査結果を論文にまとめるにあたって、まとめ方の再検討を行ったため、査読論文の執筆は当初の予定よりも遅れているが、2020年度中の掲載は決定している。さらに、本年度の調査結果を踏まえて、もう一本の論文執筆も現在作業中である。 研究計画書から調査方針に一部変更を加えたが、オープンスペースを介した、住宅団地のより豊かな住環境実現への知見を深めるという本研究の目的に向けての方向性に変わりはなく、当初の予定並みの研究成果も得られたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の現地調査結果及び文献調査結果について、まだ査読論文にまとめられていない部分があるため、まずはこれまでの調査結果を論文にまとめる予定である。 また、2020年5月現在、COVID-19による影響で海外渡航制限、国際会議開催中止などが発生しているため、今後の追加調査等については著しい制限が生じる可能性があるが、インターネットを用いた資料調査など、可能な限りの情報収集は継続していく予定である。 また、区行政による屋外空間再生施策は今後も継続して行われるものであるため、5年、10年と長期的な視点をもって、その現状や評価の変遷を追っていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究に関する内容で投稿していた査読論文の審査が想定よりも長く、交付年度中の掲載が困難であったため。なお、該当査読論文については2020年度の掲載が決定した。また、想定以上の関係資料が得られたことから、こちらの成果も現在論文としてまとめており、2020年度中に投稿予定である。次年度使用額については、以上2本の論文掲載料として使用予定である。
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