2020 Fiscal Year Research-status Report
社会主義時代の大規模住宅団地のオープンスペース活用の変遷にみる地域継承性の研究
Project/Area Number |
19K21095
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 由乃 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (20825260)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 屋外空間 / オープンスペース / 再生 / 住民参加 / 区行政 / 社会主義 / プラハ / 造形芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、チェコ共和国プラハ市プラハ11 区の住宅団地イジュニームニェストにおいて、社会主義時代に開発された「大規模プレハブ集合住宅団地の再生」プロセスの中の、「オープンスペースの空間性及び使われ方」について、「周辺環境との応答とその中にみられる地域継承性」に着目して、計画の意図や物理的変化を明らかにした。 過年度までに、現在プラハ11区行政が主体となって行われているオープンスペースの再生事業の状況を明らかにした上で、本年度は、社会主義時代のアーカイブ資料をもとに、開発当初のオープンスペースの計画の意図を明らかにした。さらに、その中でも特に社会主義体制下のオープンスペースを特徴づける造形芸術作品の存在に着目し、その設置計画と現存状況について分析を行った。 その結果、JM I 内において政治色の強い造形芸術作品は結果として現存しない一方で、政治体制が変わっても普遍的に受け入れられると思われる造形芸術作品は現存していることが明らかになった。また、噴水など維持管理が必要なものについては、メンテナンスの困難さが作品の撤去の一因となっている可能性が示唆された。JM I において現存する造形芸術作品は、JM I の開発計画の意図の多くは実現されなかったという経緯の中で、当時の開発計画関係者らが意図した公共空間を構成する要素の一端として捉えることが出来、それは、集団に新しい概念を与えるといった劇的なやり方ではなく、人々の日々の生活の中の一部として静かに、屋外公共空間の中でその文化的価値が受容されるという形で、現在に繋がる都市の構成要素となっていると考えられる。以上の内容は査読論文にまとめ、2021年6月に論文掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、過年度までに行った現地調査と資料調査から分析を行い、その内容を査読論文としてまとめた。2020年度はCOVID-19の影響により海外渡航が制限される状況にあったが、論文内容の修正に当たっては、現地関係者とのメールのやり取りを通じて可能な限りの補足データ収集を行った。2020年度の研究成果の発表については、論文の査読審査に時間を要したため、掲載時期は2021年度となるが、既に掲載が決定しており、当初予定していた水準の研究成果をまとめることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究成果は、2021年6月に査読論文として掲載予定であり、2021年度の予算は該当論文の論文掲載料に使用する見込みである。 本研究課題に関して行った調査研究は概ね論文としてまとめており、また2021年度の海外調査訪問の可能性も不確実な状況ではあるが、今後も継続して情報収集につとめ、研究の発展可能性を探っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度中の論文掲載を目指して2020年6月に査読論文を投稿したが、査読及び修正に時間を要し、採用決定が2021年2月、論文掲載予定が2021年6月と2020年度内に収めることができなかったため。既に2021年度中の論文掲載が決定しているため、次年度使用額は全額論文掲載料として使用する計画である。
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