2018 Fiscal Year Annual Research Report
多層弾塑性構造物に対する地震時極限外乱法とその建築耐震設計への応用
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18H05930
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小島 紘太郎 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (10822786)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 断層近傍地震動 / 長周期長時間地震動 / ダブルインパルス / トリプルインパルス / 多自由度弾塑性モデル / 不整形立体構造物 / バイリニア+スリップモデル / マルチインパルス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、断層近傍で観測される長周期パルス性地震動と長周期長時間地震動に対する建築構造物の地震被害が懸念されており、これら2種類の長周期地震動に対して効率的かつ高精度に地震応答を評価する方法が求められている。これらの長周期地震動では、部材の損傷や塑性変形によって変化した建物の固有周期と地震動の長周期成分が一致する「極限的」なケースにおいて、建物の変形が大きく増幅する現象が知られている。本研究課題では、断層近傍地震動(長周期パルス性地震動)や長周期長時間地震動を対象として、このような最悪ケースにおける多層弾塑性構造物や多自由度モデルの地震応答を効率的に評価する方法を展開する。さらに、極限的な地震動入力およびそれに対する弾塑性構造物の地震応答を耐震設計に応用する方法を展開する。 平成30年度の研究では、断層近傍地震動における指向性パルスをモデル化したトリプルインパルスに対する粘性減衰を有する弾塑性1自由度系の極限応答の近似閉形解を導出した。さらに、主にトリプルインパルスを対象として、エネルギー平衡則を用いて導出した1自由度系の弾塑性極限応答の理論解を用いて、多層弾塑性構造物の極限応答を近似的に評価する方法を展開した。また、多層不整形立体構造物を対象として、地震入力エネルギーを最大にする極限的ダブルインパルスの最悪な地震動入力方向の評価方法を導出した。上記に加えて、長時間地震動に対する弾塑性2自由度系の極限応答の近似閉形解の導出、剛性偏心を有する弾塑性1層モデルの極限的タイミングの検証、木造住宅を対象とした断層近傍地震動および長時間地震動に対する弾塑性極限応答の閉形表現の導出を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた研究内容は、1自由度系への縮約方法を用いた多自由度弾塑性モデルの地震時極限応答評価法および多層・多自由度モデルの極限的地震動(最悪地震動)の評価方法の展開である。 縮約方法を用いた地震時極限応答評価法に関しては、1自由度系の極限応答の閉形解を用いて、非減衰の弾塑性多層建築構造物の極限応答の近似評価が可能であることを明らかにしている。また、ダブル・トリプル・マルチインパルスに対する弾塑性1自由度系の閉形解を用いて、多自由度系の弾塑性応答を簡易的に評価するための縮約法を開発しており、現在その精度および適用範囲を検証するための数値解析を行っている。 多層・多自由度モデルの極限的地震動評価法に関しては、多層不整形立体構造物を対象としてダブルインパルスにおける第2インパルスの極限的なタイミングを地震動入力方向と関連付けて評価する方法を展開した。また、1層剛性偏心モデルの極限的ダブルインパルスを明らかにして、剛性の低い構面の最大変形を近似的に評価する方法を導出した。トリプルインパルスにおいても、その時間間隔および入力レベルと層間変形や入力エネルギーとの関係を数値解析により解明しており、詳細を検証するための数値解析を引き続き行っている。 以上の通り、詳細な精度検証のための追加の数値解析を行う必要はあるが、研究の進捗状況は概ね予定通りである。これらの成果の一部は日本建築学会近畿支部研究発表会および日本建築学会大会学術講演会に投稿しており、発表を予定している。また、追加の数値解析の結果を含めて、本研究成果を査読付き論文に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究では、断層近傍地震動と長周期長時間地震動を対象としたときの最悪なケースを考慮した建築構造物の耐震設計フローを作成することを目的とする。初めに、縮約方法の精度と適用範囲の検証およびトリプルインパルスの極限性の解明のための追加の数値解析を行う。さらに、汎用構造解析ソフトウェアを用いてより複雑なモデルに対して、1自由度系への縮約方法やそれを用いた提案手法の精度、妥当性および適用範囲の検証を行う。 続いて、上記の1自由度系への縮約が困難な高層建築物や不整形立体構造物を対象として、地震時の入力エネルギーの観点から明らかにした極限的ダブルインパルスに対する応答を簡易的に評価する方法を展開する。また、多層弾塑性建築構造物を対象としたトリプルインパルスの極限性について、上記の追加数値解析よりその特徴を明らかにする。長周期長時間地震動をモデル化したマルチインパルスに関しても、多層弾塑性モデルを対象として、極限性および極限応答の評価法を展開する。さまざまな地震動モデルや建築構造モデルに対する地震応答解析からダブル・トリプル・マルチインパルスに対する弾塑性極限応答評価法の精度および妥当性を検証する。また、これまでに観測された断層近傍地震動や長周期長時間地震動のデータをとりまとめ、本理論が効率的に極限的なケースにおける建物の地震応答を評価可能であるか検証する。 最後に、上記の二つの成果をとりまとめ、最悪なケースを考慮した上で建築物の許容応答量(対象とする建築物が必要とする耐震性能)と地震動レベル、建物パラメターの関係を明確にした、長周期パルス性地震動及び長周期長時間地震動を対象とした建築構造物の設計フローを提案する。
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Research Products
(16 results)