2018 Fiscal Year Annual Research Report
戦前から1960年代までの観光地で指定された風致地区の実態に関する研究
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18H05932
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
西川 亮 立教大学, 観光学部, 助教 (70824829)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 風致地区 / 観光開発 / 1960年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、1919年の都市計画法制定以来、大都市から地方都市まで都市計画が波及していった。特に、1933年都市計画法改正により温泉地や海水浴場等の資源を有する小規模町村でも都市計画法適用が認められるようになり、全国の観光地で自然風致を保護するため風致地区が指定されていった。ところが、戦後、1960年代にマス・ツーリズムの隆盛と共に観光開発が全国的に生じ、自然環境や歴史的環境が破壊されていった。では、戦前から観光地において指定されてきた風致地区は、1960年代の観光開発に対してどう影響を与えたのか。本研究はこの問を明らかにするものである。 18年度は、戦前から1960年代までに風致地区が指定された観光地91市町村から、①風致地区の範囲が変化した地域、②風致地区の範囲は変化しなかったが観光地として開発が多かった地域を選定した。その結果、①に該当する地域として別府・舞阪・玉名、②に該当する地域として湯河原・白浜を抽出した。そのうち、18年度は玉名及び白浜を対象に1960年代の風致地区を巡る状況把握を行った。 玉名町・白浜町の風致地区に関して、熊本県・玉名市・和歌山県・白浜町に所蔵されている都市計画文書(審議会議事録・図面等)の一次資料を発掘し、風致地区をめぐる当時の議論を明らかにした。その結果、いずれの町も風致地区は1960年代の観光開発を制御するほどの影響を持ちえず、1969年法改正が風致地区を解除する機会を作ることとなったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
18年度は、研究上重要な一次資料を発掘することができたものの、当時の風致地区の開発許可関係資料は、熊本県・和歌山県のいずれも既に公文書の保管期限を過ぎており存在を確認することが不可能な状況が明らかになった。従って、19年度に地方紙や議会議事録の収集などの追加調査が必要となる想定である。以上から、「やや遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
19年度は、18年度の研究から継続し、さらに対象地を拡大させて研究を行う。そのうえで、18年度・19年度の成果として1960年代の観光地における風致地区行政の実態を考察し、風致地区制度の課題と効果について明らかにする。 ①個別の風致地区に関する研究:昨年度の研究対象地(白浜・玉名)については、更に追加で歴史的資料を発掘し、研究としての質を補完させていく。19年度は新たに別府・湯河原・舞阪を対象に加え、都市計画審議会議事録・市町村議会議事録・市町村都市計画課所蔵資料を収集して風致地区を巡る観光開発による影響や効果を明らかにする。また、熱海市については、追加調査を行った上で、19年度中に論文(都市計画学会あるいは建築学会)として投稿する。 ②1960年代の観光地における風致地区行政の実態に関する考察:18年度実施の調査結果及び①の結果を踏まえて、1960年代の観光開発に対する都市計画行政の対応を、風致地区行政の観点から比較して分析する。研究結果は20年度以降に都市計画学会あるいは建築学会に論文として投稿する。 19年度の研究スケジュール:主に19年4月~12月にかけて個別の風致地区に関する研究を行う。そして、20年1月~3月にかけて総括として1960年代の観光地における風致地区行政の実態を考察する。
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Research Products
(1 results)