2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the effect of dynamic wind loading on wind resistance of wooden house roofing
Project/Area Number |
18H05934
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
今野 大輔 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00825325)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 屋根接合部耐力 / 木造軸組工法 / 風洞実験 / 外圧係数 / 積雪寒冷地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,木造住宅の強風被害の低減に向けた,強風災害リスク評価手法の開を行う為に,その基盤となる「強風による動的応答を考慮した試験方法の確立,および屋根構成部材の耐力情報の拡充」,および「住民とのリスクコミュニケーションに基づいた,住民にわかりやすい強風災害リスク評価手法の開発」を目的としている。 前年度の研究実績として,「(1)積雪寒冷地の建物構成把握の為のフィールド調査及び文献調査」,「(2)木造住宅の屋根部に作用する風圧係数取得の為の風洞実験」,「(3)垂木軒桁接合部の接合方法をパラメータとした静的破壊試験」を実施した。 (1)のフィールド調査と文献調査においては,建物に作用する風圧に影響及ぼすとされる,建物の配置および各建物の構成について調査を行った。特に,建物構成には,地域性があると考えられる為,本研究では,積雪寒冷地を対象として,建物構成の調査を行い,積雪寒冷地における一般的な建物構成の抽出を試みた。 (2)の風洞実験においては,(1)において得られた建物環境情報を基に対象建物を決定し,その対象建物の構成を再現した模型を作成し,風洞実験を行った。風洞実験では,建物に作用する風圧係数(外圧係数,内圧係数)の時刻歴を取得した。特に,本実験で用いた模型では,軒先の表裏面に測定孔を設けることで,特に強い風圧が作用する軒先部の外圧測定を行うことができた。また,建物の屋根勾配が変化した場合の実験も行い,それらの変化が風圧係数時刻歴に及ぼす影響についても検討した。 (3)の垂木軒桁接合部の静的破壊試験においては,(1)により得られた建物構成に基づき,木造住宅の屋根接合部を再現した試験体を作成し,静的な引張試験を実施し,接合方法が異なる場合の接合部の耐力取得を行った。本結果は,本年度行う動的載荷試験結果との比較により,接合部に及ぼす動的応答の影響の把握の為に用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度では,(1)建物構成の地域性把握の為のフィールド調査,(2)屋根部に作用する風圧係数取得の為の風洞実験,(3)風洞実験により得られた風圧係数を実物大動風圧試験,を実施する予定であった。 (1)のフィールド調査については,風洞実験及び実物大動風圧試験実施の為に,地域別の屋根勾配や屋根ふき材の使用方法の調査を行うことが目的であったが,本年度は風洞実験を先に実施する為に,屋根勾配の情報の取得が先決であった。屋根勾配の取得のみであれば,既往の文献調査により,積雪寒冷地における屋根勾配の比率データを得ることが可能であるため,前年度においては詳細なフィールド調査は実施せず,簡単な調査と文献調査により情報を取得することとした。本年度において,屋根ふき材の使用方法や,建物配置の調査を目的として,調査対象地域を絞ったフィールド調査を実施予定である。 (2)の風洞実験については,計画通り実施した。文献調査に基づいた建物情報を基に,風洞模型を作成し,風洞実験を実施することで,屋根部に作用する風圧係数時刻歴の取得を行うことができた。また,当初は軒先部の表面のみの風圧係数を取得する予定であったが,軒先部に3D造形を用いた測定孔を設けて製作を行ったことにより,軒裏面の風圧係数取得も可能となり,当初の予定よりもより実現象に即した形での実験を実施することができた。 (3)の実物大動風圧試験については,(2)の風洞実験により得られたデータを用いて,入力荷重となるデータの作成は進めることが出来たが,(1)のフィールド調査を実施できなかった為,屋根を模擬したアセンブリ試験体の設計に至らず,実施出来なかった。その為,本年度実施予定であった,動的試験との比較の為の「垂木軒桁接合部の接合方法をパラメータとした静的破壊試験」を前倒しで実施した。 また,研究成果の公表,学会発表,論文投稿については本年度実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究計画として,(1)屋根部を対象とした実物大動風圧実験,(2)実物大実験結果を基にした屋根部の強風災害リスク評価,(3)わかりやすいリスク評価結果提示のための手法開発,を実施予定である。 (1)実物大動風圧実験においては,前年度実施した簡易なフィールド調査及び文献調査により得られた建物構成に加え,本年度実施する詳細なフィールド調査に基づき,木造住宅の屋根構成部材を再現したアセンブリ試験体を作成し,動的荷重載荷装置を用いて実物大耐力試験を行う。入力荷重としては,昨年度実施した風洞実験において得られた屋根部に作用する風圧係数時刻歴(動的荷重)と,動的効果の影響把握のための対照実験として静的荷重の載荷を行う。本実験から得られる成果としては,木造住宅の屋根構成部材における「動的効果の影響の把握」,「破損メカニズムの解明」,および「耐力情報の拡充」である。 (2)の屋根部の強風災害リスク評価手法の開発においては,実物大実験から得られた金属屋根ふき材の耐力情報を用いて,強風災害時に発生が予想される住宅被害の一連の流れを再現したリスク評価手法の開発を行う。これまでのリスク評価に関する既往の研究においては,「この建物は危険である」 といった情報に留まっていたが,リスクコミュニケーションを通じて,「どれくらい危険なのか」という情報を共有し,意思決定の判断材料として修繕や改築等により得られる利益を明示することを目指している。 (3)のリスク評価結果提示のための住民とのリスクコミュニケーションにおいては,(2)において開発,計算を行ったリスク評価結果を基に,その結果を実際のステークホルダーとなる住民に協力を得て,リスクコミュニケーションを行い,リスク情報の分かりやすさについてフィードバックを得る。そのフィードバックに基づき,より有用なリスク評価結果の示し方を明らかにする。
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