2019 Fiscal Year Research-status Report
骨形成因子結合多糖の空間分布が異なるリン酸八カルシウム表面での骨形成挙動解明
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19K21104
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱井 瞭 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00824004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン酸八カルシウム / 表面化学修飾 / コンドロイチン硫酸 / タンパク質 / 溶解度 |
Outline of Annual Research Achievements |
加熱処理により,リン酸八カルシウム(OCP)に修飾処理したアミノ基の安定性を向上を試み,加熱により安定性は向上する傾向にあった。しかし,リン酸緩衝生理食塩水中では未だ多くのアミノ基含分子が溶出するとともに,加熱温度によってはOCPの結晶構造が大きく変化した。 そのため,加熱温度がアミノ基含有分子の修飾後のOCPの結晶構造に及ぼす影響を検討した。修飾分子は昨年度と同様に,アルキル鎖の末端に一級アミノ基を有するホスホン酸誘導体を選択した。X線回折法や赤外分光光度法による分析とあわせて,アミノ基修飾溶液での処理後に,OCPの結晶構造が維持される加熱温度および処理時間を見出した。さらに,修飾したアミノ基含有分子の溶出を抑制しつつ,コンドロイチン硫酸との化学結合形成が可能な溶液環境の最適化を試みた。検討の結果,溶液のOCPに関する過飽和度を調節することで,OCP自身の溶解挙動にともなって表面に残存するアミノ基の量が変化した。また,多くのアミノ基含有分子がOCP表面に残存する溶液環境において,N-ヒドロキシエステル化したコンドロイチン硫酸との反応により,共有結合(アミド結合)形成の可能性が示唆された。また,コンドロイチン硫酸の修飾方法により,OCP表面とタンパク質との相互作用が変化する可能性も示唆された。これらの検討より得られた知見は,結合状態を制御して生体由来の高分子を修飾した溶解性リン酸カルシウム表面モデルの設計指針となり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OCP表面に修飾したアミノ基とグリコサミノグリカンの結合状態が異なる表面モデルを作製し,間葉系幹細胞に対する応答性を評価する予定であった。しかし,水溶液環境下でアミノ基含有分子をOCP表面に安定的に存在させた状態でグリコサミノグリカンを結合させるための最適化条件を見出すために想定以上の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸八カルシウム(OCP)表面への修飾方法が異なるコンドロイチン硫酸への骨形成タンパク質の吸着や複合化条件(コンドロイチン硫酸の修飾量や吸着・複合化に用いる溶液環境など)を詳細に検討する予定である。その後,コンドロイチン硫酸の修飾方法によって複合化したタンパク質の徐放性が異なるか,細胞培養液や培養環境を模した緩衝液を用いて検討する。そして,OCPへのコンドロイチン硫酸/タンパク質複合体の修飾状態が間葉系幹細胞の増殖や骨芽細胞分化に及ぼす影響の評価をin vitroで試みる計画である。
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Causes of Carryover |
OCP表面に修飾したアミノ基とグリコサミノグリカンの結合状態が異なる表面モデルを作製し,in vitroでの細胞応答性評価まで実施する予定であった。しかし,OCPの結晶構造の維持とOCP表面に存在するアミノ基含有分子の水溶液中における安定性向上を両立可能な条件を見出すために想定以上の時間を要した。そのため,細胞応用性評価などに関連する実験を実施できなかったため,次年度使用額が生じた。当該の助成金は,細胞実験の推進と研究成果発表のために使用する計画である。
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Research Products
(4 results)