2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H05940
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山野 範子 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20582795)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | CHO細胞 / 動物細胞 / 組換えタンパク質生産 / 染色体不安定性 / 染色体不分離 / 染色体異数性 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
① 中心体の複製異常を引き起こす薬剤である3-ABを用いて、最終濃度10 mM、72時間の処理において染色体数分布の多様性が生じ、比生産速度の上昇が確認された。一方で、未処理の細胞と比較して比増殖速度は低下した。 ② CHO-DG44細胞で自然に生じた、主な染色体数が20本と39本のサブクローン(DG44-SC20・DG44-SC39)とそれらを宿主としたIgG3生産細胞(IgG3-SC20・IgG3-SC39)について核型解析を行った。各染色体の平均本数を算出した結果、通常よりも染色体数の多いDG44-SC39とIgG3-SC39の両方で、2番、5番、6番、10番染色体の増加率が偏差値で50以上あり、染色体数が増えやすい傾向にあった。また平均本数の変動係数を算出した結果、1番から6番染色体の変動係数の値が低い傾向にあり、7番から10番染色体、X染色体と比べて安定だと考えられた。 ③ DG44-SC20・DG44-SC39・IgG3-SC20・IgG3-SC39の4種類の細胞について、mRNA-seq解析を行った。宿主細胞であるDG44-SC20・DG44-SC39、または、IgG3を生産するIgG3-SC20・IgG3-SC39細胞で、染色体数の異なるものを比較し(DG44-SC20 vs DG44-SC39, IgG3-SC20 vs IgG3-SC39)発現量が2倍以上に上昇もしくは1/2以下に低下している遺伝子数を検討した。その結果、IgG3-SC39はIgG3-SC20と比較して発現量が増加する遺伝子数よりも発現量が減少する遺伝子数が多かった。また、これらの発現変動遺伝子群のシグナル伝達経路について解析をした結果、染色体数の変化に伴い、増殖や分化、アポトーシスに関わる遺伝子が増減し、IgG3生産細胞については脂質代謝やヒストン修飾に関わる遺伝子が変動した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必ずしもポジティブな結果が得られたわけではないが、計画通りに実験を遂行し、その結果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えタンパク質の発現ベクターを導入していないCHO細胞に染色体異数性を誘導し、自然には存在しない染色体数を持つ細胞株の取得を試みる。その取得した細胞株について、遺伝子導入効率の評価、及び、宿主細胞として組換えタンパク質生産細胞を構築した場合の比生産速度の評価を行う。また、各染色体の本数の増減、並びに、各染色体の転座の起こりやすさを統計的に解析することにより、染色体不安定性を持つ細胞における各染色体の安定性の違いについての評価を引き続き行う。次に、安定染色体に組換えタンパク質の発現ベクターを導入する試みを行う。具体的には、各染色体に対応した物理地図を作成しているCHOゲノムライブラリーの配列情報を用いて、ゲノム編集技術である CRISPR/Cas9システムにより、安定染色体に抗体発現ベクターを導入する。構築した細胞株について、導入位置の確認と生産性の評価、さらに、継代安定性に関する評価を行う。
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Research Products
(3 results)