2018 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期腰痛に対する慣性センサと筋骨格モデルを用いた運動特性可視化システムの構築
Project/Area Number |
18H05962
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森野 佐芳梨 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 助教 (10822588)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 妊婦 / 腰痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中の腰痛は妊婦の50%以上が経験し、出産後も症状が遷延化することで生活の質を低下させる大きな問題である。これに対し臨床では、妊娠期腰痛の原因である腰部の筋負荷軽減効果を期待し、骨盤ベルトが適用される例が多いが、骨盤ベルトによる妊娠期腰痛防止効果のメカニズムは明らかではない。そこで本研究では、動作解析における妊婦への負担の少ない慣性センサ(Inertial measurement unit: IMU)と妊婦筋骨格モデルを用いて、運動と筋活動を可視化することにより、骨盤ベルトの腰痛防止効果のメカニズムを明らかにすることを目的とした。平成30年度は、妊婦の腰背部に装着したIMUデータによる動作解析結果および筋骨格モデルによる筋活動状況と腰痛との関連性を調査した上で、学会等で成果を発表し、専門家と議論した。その中で、体幹の動きをより詳細にとらえることが、腰痛発症機序を調査するのに適切であるとの意見を得た。当初の研究計画では体幹をひとつの剛体とみなし、体幹上部に装着したIMUにより動作解析結果を示す予定であったが、体幹の中でも脊柱の動きとともに屈曲伸展や側屈等が起こる。さらに、腰痛は腰椎およびそれに沿って走行する脊柱起立筋に深く関わっている。これらより、骨盤ベルトの腰痛への影響を調査するのであれば、体幹内における動きを詳細に調査することが望ましい。そこで、骨盤部と体幹上部に1台ずつIMUを装着する予定を変更し、20個のIMUをシート状に配列した装置を脊柱に沿うように装着し、そこから得られる情報により体幹の動きを詳細にとらえる計画に変更した。これより、変更した計測装置を妊婦に対して用いる前に、成人女性において一連の計測装置を用いた動作計測を行った。この際、骨盤ベルトを装着した状態においても計測を実施し、その違いを検討することで、動作解析における評価項目の検討を同時に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、妊婦を対象にIMUと筋骨格モデルを用いて行った、身体動作と腰痛との関連性に関する研究成果を学会等で発表した。この中で、専門家との議論を進めたところ、骨盤ベルトの影響を調べる以前に、計測項目の見直しが必要と考えた。具体的には、当初の予定では両大腿、両下肢、骨盤部、体幹上部の計6ヵ所にIMUを装着し、それぞれの部位を剛体と捉えて動作解析をする予定であった。この予定では、体幹の動きをIMU1台で計測することとなる。しかし、腰痛には脊柱の腰椎部およびその周辺に位置する脊柱起立筋への負荷が大きく関与しており、脊柱の湾曲状態や屈曲伸展等の動きを詳細にとらえることが望ましいといえる。そこで、当初の研究計画であった、体幹上部に1台のIMUを装着する予定を変更し、20個のIMUをシート状に配列した装置を主に腰背部の脊柱に沿うように装着し、そこから得られる情報により体幹の動きを詳細にとらえる計画に変更した。これより、計測装置の変更に伴い、計測環境や計測手順、動作解析における評価項目を再度検討する必要性が出た。そこで、変更した計測装置を妊婦に対して用いる前に、妊婦への適用を考慮したうえで、非妊婦である成人女性を対象に計測装置を用いた動作計測を行った。この際、骨盤ベルトを装着した状態および未装着の状態においても計測を実施し、その違いを検討した。この動作計測検証において、当初は1年度目に妊婦を対象に実施する予定であった計測項目の検討も同時に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、研究計画を見直したことで、計測装置および計測項目が変更になった。これに伴い、計画を一部変更し、計測環境や一連のプロトコールについて成人女性を対象に検証した。この際、当初1年度目に妊婦を対象に実施する予定であった計測環境や手順の確認、計測評価項目の検討についても同時に行った。 平成31年度は、前年度の検証実験において確認した計測および動作評価プロトコールを用いて妊婦を対象に計測実験を行う。これにより、研究目的である、IMUと妊婦筋骨格モデルを用いて、妊婦における運動と筋活動を可視化することにより、骨盤ベルトの腰痛防止効果のメカニズムを明らかにすることを目指す。
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