2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of catalytic asymmetric nucleophilic addition of sp3 C-H bond to aldehydes
Project/Area Number |
18H05969
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三ツ沼 治信 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (20823818)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | sp3C-H結合活性化 / ラジカル / 可視光光触媒 / クロム触媒 / 単純アルケン / 触媒的不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の提案では炭素ラジカルの付加が通常進行しないとされるアルデヒドを求電子剤とし、第一列遷移金属触媒によるラジカル種の有機金属種への変換を基軸とした単純アルカンsp3C-H結合の触媒的不斉付加反応の開発に取り組むことを目指している。本提案が達成された場合、産業的にも重要なグリニャール試薬などと同等の求核的活性種を不活性C-H結合から系中発生させることが可能になり、既存プロセスを革新しうる方法論になると考えられる。初年度は単純アルケンのC-H結合を中心に有機金属種に関する知見を得ることを目指した。本反応で生成するキラルアルコールは、医薬品や農薬などの重要な合成中間体として知られているが既存の合成方法では、入手容易な原料から多段階の工程を経る必要があることが多く、大量に廃棄物が副生することが不可避であった。検討の結果、単純アルケンとアルデヒドを、不斉を制御しながら直接反応できるハイブリッド触媒系を見出した。このハイブリッド触媒系は、光触媒とクロミウムクロム錯体触媒の二成分から構成され、通常活性化が難しいとされる単純アルケンのアリル位の炭素-水素結合を、室温、可視光照射という極めて温和な条件で切断し、アルケンをキラル有機金属種に変換する。これがアルデヒドと反応することで、キラルアルコールが生成される。本ハイブリッド触媒系の創製により、安価で入手容易な原料から、わずか一工程で廃棄物を一切出すことなく最小限に抑え、しかも高度なキラリティ制御を伴って有用有機分子を合成できるようになったと言える。本実績はこの提案のゴールである「安価で豊富な炭素資源を高付加価値の有機分子へと効率的に変換する化学プロセスへの応用」へ大きく寄与するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のポイントとして①sp3C-H結合をラジカル的に活性化し有機ラジカル種を発生させること、②生成したラジカルを補足しカルボニル化合物に付加する金属触媒を見出すことが挙げられる。特に初年度はより開発が難しいであると考えられる②について中心に検討を行った。第一段階として基質には炭素資源として豊富に存在する単純アルケンを用いることとした。この場合、生成物は医薬品や農薬などの重要な合成中間体であるキラルホモアリルアルコールでありより直接的な変換法の開発が望まれている。まず光触媒条件下、アルケンの1電子酸化と続く脱プロトン化にてアリル位にラジカルを生成させることとした。金属触媒としては野崎・檜山・岸反応で知られているクロム触媒を用いたところ反応が円滑に進行することを見出した。なお本反応条件では反応の進行を加速させるためにマグネシウム塩の添加が極めて重要であった。反応は様々なアルデヒドに対して温和な条件下、化学選択的かつ高い立体選択性で進行した。本成果は世界初の単純アルケンを基質とする触媒的不斉アリル化であり非常にインパクトのある結果であると言える。石油資源に豊富に含まれる安価な炭化水素資源を原料に直接的に高付加価値の有機分子であるキラルホモアリルアルコールに効率的に変換する化学プロセスを達成できたと考えている。初年度で得られた金属触媒種に関する知見は次年度以降の研究の進展に大きく寄与できるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は石油資源などの単純アルカンに含まれる不活性なsp3C-H結合を活性化しカルボニル化合物に直接的不斉付加させる触媒反応の開発に取り組む。前年度に私は本研究の核である有機ラジカルを補足しアルデヒドに付加する金属触媒としてクロム触媒が有効であることを見出している。この報告を基に①今年度はまずラジカルの発生法としてより高い結合乖離エネルギー(BDE)を持つラジカル引抜き触媒(キヌクリジンやカルボン酸類など)を組み合わせる検討し、より不活性な基質である単純アルカンに対する反応を目指す。モデル基質としてはシクロヘキサンを想定している。ここでは系内にある複数の高反応性ラジカル種と金属の失活などが問題になることが予想されるが、触媒の立体や電子的な要因を調整することによりこれを克服する予定である。②これと合わせて前年度見出しているクロム触媒を基に有効な不斉配位子に種々の置換基を導入して配位子の最適化を図る。不斉配位子として用いているビスオキサゾリン配位子は置換基の導入が容易であるため、金属周りの立体を微調整することが可能であるという利点がある。また同時に系の不斉化も容易であろうと考えられる。以上が達成された場合、室温、可視光条件といった温和な条件にてアルカンのsp3C-H結合を直接的に有機金属種へと変換し、カルボニル化合物と反応させることができる。このような触媒的不斉付加は現在のところ全く前例がなく、極めて新規性の高い反応である。本研究は産業的にも重要なグリニャール試薬などと同等の求核的活性種を不活性C-H結合から系中発生させることが可能になり、既存プロセスを革新しうる方法論になると言える。
|
Research Products
(12 results)